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教育プログラム|講演・シンポジウム|SDGs
2024/08/28
2024年7月23日(火)、サステイナビリティ観光学部 橋本俊作教授の授業「ホスピタリティマーケティング・ホスピタリティオペレーション」内で、国際労働機関(ILO)高﨑真一駐日代表をお招きし、「労働と人権」をテーマとした特別講義を開催しました。
ILOは労働の課題を扱う国連専門機関として1919年に創設されました。以来、労働課題の解決による社会正義の実現を目指して活動を続けており、現在187の国が加盟しています。ILOが取り組む労働問題の代表例としては、途上国の劣悪な労働環境、児童労働、途上国や先進国での強制労働の問題です。高﨑氏は、事例や統計を用いて各問題の現状を伝え、それらが当事者だけではなく現代を生きる全ての人に関わりがあることを学生たちに示しました。
講義では、学部に関わりが深いホスピタリティ産業の労働問題についても言及され、業界では特にハラスメント、ジェンダーに基づく人権侵害が多く見られることが指摘されました。高﨑氏は、これらの問題は日本では見えづらくなっているが確実に存在しており、世界の状況を参考に注視することの重要性を説きました。
高﨑氏は、日本の大学生が国内外で起こっている労働問題に自覚的になることの意義として、自身が利用するもののメーカーを意識して調べ、考えることによって、人権侵害への加担が避けられるようになると述べました。同時に、様々な労働問題のケースを知ることにより、自分自身が労働の権利を侵害されないよう、自らを護ることもできると学生たちを励ましました。
また、ILOが現在「ビジネスと人権」という考え方から、企業に人権尊重を促すための指導を行っているという動向も教授されました。企業は利益を目的に組織されていますが、人権保護に注力することで、様々なリスクを回避できると同時に、企業価値を高めて投資・就職先に選ばれるというメリットを享受できます。ILOでは、ビジネスが圧倒的な力を持つ現代において、企業が人権を尊重すれば史上最大の成功をおさめられるかもしれないという期待のもと、組織の90%を企業の人権保護への支援に注力しています。
最後に高﨑氏から学生たちに向けて、自分たちの仕事の未来のために今できることとして、新聞記事やニュースから国内外の労働に関する情報を取り入れること、ILO駐日事務所や他の国連機関のセミナーに参加してグローバルな視点を身に付けること、人権に配慮したフェアトレード製品に注目してエシカル消費を実践すること、学んだことを家族や友達と話し合ってみることなど、日常的に取り組める活動が提案されました。講義の終わりには、技能実習制度やESG投資、児童労働についてなど、多岐にわたる質問があがり、高﨑氏は一つひとつに丁寧に回答されました。