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元国連旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所 法務官によるRCAPS Onigiri セミナー開催、河島さえ子講師へのインタビュー

研究|SDGs

2019/01/29

11月16日(金)、現在オランダのハーグで活躍されている河島さえ子氏をお招きし、「国際刑事司法手続の発展と課題-国際刑事裁判所と国連旧ユーゴスラビア国際刑事法廷を比較して考える」と題して、立命館アジア太平洋研究センター(RCAPS*)セミナーを実施しました。河島氏は戦争で荒廃したバルカン半島の社会における国際刑事司法の影響について精通されています。
国連旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(ICTY)が1993年に設立されて以来、戦争犯罪、人道に対する罪、大量虐殺に関して、個人の責任を裁判により取り扱うグローバルな取り組みの一環として、国際刑事司法制度は劇的な発展を遂げました。国際刑事裁判所(ICC)の設立により、この発展に拍車がかかりました。
この発展の過程で、ICTYとICCは国内の裁判所が通常遭遇しないような、様々な課題に直面してきました。それらの課題は、訴訟手続きが国際的な性格を有すること、そして、対象となる犯罪の規模が甚大であることに起因するものです。
同氏はこれらの課題への取り組みのためにICTYやICCが発展させてきた手続きを説明するとともに、2016年のシリアや、2018年のミャンマー(ロヒンギャ)のケースについても触れつつ、国際法の下に重大犯罪への対策としてどのような試みがなされているかについて、今日の情勢を分析しました。
本セミナーはAPUの学生にとって、国際刑事裁判が凶悪犯罪にどう対応するのかについてその分野の優れた経験を持つ専門家から直接学ぶ、非常にまれな機会となっただけでなく、とりわけ平和構築の分野において国際組織での仕事を望んでいる学生に貴重な見識を与えるものでもありました。
本セミナーは高柴優貴子 アジア太平洋学部准教授が司会を務め、山神進 同学部教授が討論者を務めました。

河島さえ子氏ヘのインタビュー

- 本日は立命館アジア太平洋研究センターのセミナーでの講演依頼を受けていただき、ありがとうございました。今、先生はオランダのハーグにお住まいで、仕事をされておられますが、オランダにどのくらい滞在され、またどのようないきさつでオランダに行くことになったのか教えていただけますか。

移住する前に、オランダで2度インターシップをしました。その一つが国連旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(ICTY)でのものでした。ICTYでのインターンシップは本当に楽しく有意義でした。様々な文化的背景を持つ同僚のいる職場で自分が学んできた法律の知識を活用できる機会を与えられ、国際的な環境で仕事をしたいという思いを実現できた場所でした。そのような体験をしたので、ICTYから仕事のオファーがあった時に、私はオランダ行きを決意しました。ICTYが任期満了で閉廷した昨年末まで、トータルで12年あまりICTYで勤務しました。インターシップの期間を含めると、約13~14年オランダに住んでいることになります。

- 随分長い期間ですね。昨年のICTYでの任期終了後はどうされていますか。

独立して司法コンサルタントの仕事をしています。Sawara司法コンサルティングという名前で自身のオフィスを構えています。

- そうですか。多くの人がオランダでの先生の生活についてもっと知りたがっていると思うのですが、何かカルチャーショックのような経験をされましたか。

直面した大きなカルチャーショックといえば、オランダの人々の直接的な気質です。日本人は遠まわしなやり方・言い方をする傾向がありますが、それとは全くもって正反対でした。慣れるのに若干の時間が必要でした。

- 興味深いです。オランダ人といえば世界的にも長身で知られていますが、それにも驚きましたか。

はい、本当に驚きでした。私はかなり小柄なので、自分に合うサイズの服を購入するのが難しかったです。特にスーツですね。また、スーパーでは最上段の棚に手が届かず困りました。

- 先生の講演は「国際刑事司法手続の発展と課題」と題していましたが、いつ、どのようにこのトピックへの興味を持つようになったのか教えていただけますか。

先程も申し上げたように、オランダに移住する前に、ICTYでのインターシップを経験しました。これに至るまでには数々の偶然が重なったのです。ニューヨーク大学で修士号を取得した時に、オランダ出身のルームメイトが同様のインターシップを行っていて、私にも応募するよう薦めてくれました。私は応募をし、採用されました。それからICTYや国際刑事司法一般について学び始め、さらに興味を深めていくことになりました。

- 日本でもトップクラスの大学で学位を取得し、アメリカで修士号を取得、その後オランダに住み、仕事を持つというキャリアの道筋は、一般的な日本の法律家とは、間違いなくかなり異なっていると思います。将来のキャリア進路をどのように決めていくか、APUの学生たちへのアドバイスはありますか。

自分がどこにパッションを持ち、何に興味を寄せていくのかを決めるまでには、いろいろな新たなことへ挑戦してみることが大切だと思います。勇敢に、勇気をもって、世界に出て行って、自身は何が好きで何が嫌いなのか、何が得意なのかをより明確にしてから、自分の将来の進路を決めていくことです。日本では、大学生にとっては、卒業の前年には就職活動をスタートするというプレッシャーがありますが、私は職探しをする前に、社会の様々なことを探検し新たな経験を得るための時間をとるというのも非常に良いことだと考えています。

- とても思慮深いお言葉ですね。新たなことを探求したい、しかしその勇気が足りない、あるいは家族に反対されるという若者にかける言葉はありますか。

日本では、一般的に社会的通念に従い、卒業時には「良い」「有名な」企業に就職することに過度に重点が置かれています。従って、未知なる物に危険を冒して挑戦することへの恐れは、よく理解できます。しかし、社会のプレッシャーを過剰に意識しすぎて、今この時を生きられないでいるのではないでしょうか。人生は一度しかないのですから、本当にやりたいことがあるとしたら、年齢を重ねた時にやらなかった事を後悔することになるかもしれません。私は今でも、「やってみなければ、何も起こらない。」という言葉を忘れないようにしています。人生は必ずしも計画通りには進みません。それは仕方がないことです。挑戦したという事実が貴重であり、称賛に値することなのです。それによって必ず学ぶことがありますし、人生の次のステップにおいて、何らかの役に立つはずです。家族の反対に関しては、幸いなことに私の両親は私の決意を応援してくれたので、私からアドバイスできることはないのですが、一つ考慮すべき点は、財政面のことです。海外で経験を積むにはお金がかかりますので。誰にでもその余裕があるわけではないのですが、私の学生時代と比べ昨今では、より多くの大学や組織から海外での就学のプログラムが提供されていますし、その多くには奨学金が付与されています。従って私からは、そのようなチャンスを良く調べて探すことをお薦めします。どんな機会が自分の手の届く範囲にあるのかを、まずは知ることが重要です。

- 河島先生、お時間をいただきありがとうございました。APUの学生たちは先生のアドバイスを聞いて、非常に有益でまた励みになると感じると思います。


*アジア太平洋研究センター(Ritsumeikan Center for Asia Pacific Studies : RCAPS)は、APUの教員や大学院生によるアジア太平洋地区に関する研究を促進するものとして立案されたセミナーを開催しています。Onigiriセミナーシリーズはおにぎりや、軽食、ドリンクが提供されるユニークなスタイルのものです。さらに、講義後に講師と参加者の教員、学生に自由な意見交換を促すものでもあります。すべての教員、学生は、無料でセミナーに参加できます。



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