学生ブログ

多様性と対話の場「ヒューマンライブラリー」がAPUで始動 #2

読了時間: 4分

前回、APU Human Libraryができるまでを紹介しました。今回はAPUで行われているヒューマンライブラリーの体験を紹介します。

ヒューマンライブラリーを体験

自身の経験を語るナイラさん

今年の5月、SALCで開催されたヒューマンライブラリーを取材しました。今回「本」として語り手を務めたのは、アジア太平洋学部2回生のナイラさん。内向的な性格ゆえに悩みを抱えていた彼女が、自分自身を受け入れ、心の平穏を得るまでの道のりを、7人の「読者」に語りました。会場では、ナイラさんを囲むように読者が座り、うなずきながら話を聞く人や、自分の経験を重ねて語る人の姿も見られ、終始アットホームで温かな空気が流れていました。

ナイラさんに、自分の内面を人に話すことに抵抗はなかったのか尋ねると、「初めてヒューマンライブラリーに参加したとき、みんな優しくて、怖くなかったのです」と穏やかに答えてくれました。初めて「本」として参加した今回の経験については、「成長できたし、聞いてくれる人がいると気づけた」と、笑顔で話してくれました。

陶山さんは、APUでHuman Libraryを行う意義についてこう語ります。

「APUにはキラキラしている人が多くて、何かを達成した『アチーブメント』について話す機会は多い。でも、自分の弱みや正直な感情を話せる場はあまりないのです」。さらに、「多様性って国籍だけの話じゃない。さまざまな経験をしてきた人がいて、その人の話を直接聞くことで、自分の視野が広がり、人間としての深みも増す」と続けます。

運営面で大切にしていることについては、「誰も傷つくことのない場にしたい」と話します。そのために、陶山さんは〝司書〟として、参加者への注意喚起や、本役との事前の打ち合わせなど、丁寧な準備や参加へのハードルを下げるよう努めています。

講義でヒューマンライブラリーを紹介した筒井久美子 教育開発・学習支援センター教授にお話を伺ったところ、「『自分は差別されたことも、生きづらさを感じたこともない』と感じている人こそ、ヒューマンライブラリーにぜひ参加してほしい。というのも、人は過去のつらい経験に無意識のうちに蓋をしてしまいがちだからです。しかし、その経験は忘れたつもりでも、今後の人生の中でさまざまな形で影響を及ぼす可能性があります。また、『みんな何かしらつらい経験をしている』と自分に言い聞かせて我慢してしまうことも多く、それが当たり前のように思えてしまうのは危険です。少しでも誰かに話してみることで、自分がどのように困難を乗り越えてきたのかに気づき、初めてその経験を“克服した”ものとして捉えることができる――そうした気づきが、自己理解の一歩になります。」と語られました。

Human Libraryの意義

私は、APUでHuman Libraryを行うことの意義は、キャンパスの多様性をより深く掘り下げ、その質を高めていける点にあると感じます。

多様性には大きく分けて2つの種類があるといいます。ひとつは、性別や国籍、宗教といった見た目や属性に基づく「デモグラフィー型」。もうひとつは、個人の経験や感性に基づく「タスク型」の多様性です。このうち、「デモグラフィー型」の多様性があるだけでは、かえって分断や偏見を助長してしまう可能性もあり、必ずしも組織やコミュニティにとってプラスに働くとは限らないそうです。

APUには、さまざまな国籍や宗教的背景を持つ学生が集まっていますが、APU Human Libraryはそのような社会的属性にとどまらず、何らかの生きづらさや悩みを抱える人々が、自らの経験を語り、共有する場をつくることで、より本質的な多様性を築いています。

こうした対話の積み重ねは、APUが持つ多文化環境のポテンシャルを活かしつつ、人と人とが内面でつながるような、より深いレベルでの相互理解と共感を育んでいると思います。

APU Human Library
APU Human Library
青木夏輝
青木夏輝

こんにちは!アジア太平洋学部(APS)4回生、国際関係専攻(IR)のなつきです。APUで経験した面白いことや、新たな発見、出会いなど紹介して、皆さんの日々の生活にインスピレーションをお届けできればと思っています。よろしくお願いします!




  • LINEで送る

PAGETOP