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2022年に開催された国際人道法ロールプレイ大会国内予選で、アジア太平洋学部の平野実晴助教ゼミ生から成るAPUチームが優勝を果たしました。卓越した知識、熱意、粘り強さを見せつけて、偉業を達成した3人。彼らの存在はAPUで学ぶ仲間たちにもインスピレーションを与えてくれます。このブログでは、チームが得た素晴らしい経験、乗り越えた課題、その過程で沸き起こった様々な思いを取材しています。同時に、学生たちへの貴重なメッセージもお届けします。
国際人道法ロールプレイ大会国内予選で優勝したAPUチームのメンバー:
GHOZALY Ghiandi Amna(アジア太平洋学部4回生、インドネシア)
SATIMBOEVA Rukhsora(アジア太平洋学部4回生、ウズベキスタン)
NGUYEN Thu Thuy(アジア太平洋学部4回生、ベトナム)
2022年12月10日、東京大学(駒場キャンパス)にて、赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表部主催の国際人道法ロールプレイ大会が開催されました。大会では、参加者は人道支援員や政府職員などの役割を与えられ、架空のシナリオの中で責任を持って行動することが求められます。優秀なパフォーマンスを披露したAPUチームは国内予選で優勝し、国際人道法ロールプレイ大会として最も権威ある「ジャン-ピクテ・コンペティション」への出場権を獲得しました。第40回目となる本大会は、2023年2月25日から3月4日まで、アルバニアのデュルエスで開催されました。
チーム:私たちが7セメスター目(4回生前期)の初旬に、ICRC国際人道法ロールプレイ大会の公示がありました。ICRC主催の大会には「模擬裁判」と「ロールプレイ」の2種類があります。模擬裁判ではフォーマルかつ厳密で深い法的議論が求められるのに対し、ロールプレイではより自由な反応が許され、実践的、「創造的」要素が含まれます。平野先生のゼミでは、アカデミック・ライティングの修練だけでなく、大会への出場が強く推奨されます。学んだ知識を生かして実践的な経験を積むためです。先生は国際法のバックグラウンドを持ち、模擬裁判の権威ある大会での実績もあるため、専門知識と経験のいずれも備えています。貴重なアドバイスをたくさんもらいました。 ゼミ内の3回生以上の学生は、希望すれば様々な大会への出場チャンスがあります。 私たちの場合、確か2022年8月頃に大会の案内を受けて、同年12月に参加しました。
Thu Thuyさん:平野ゼミの先輩が大会のことを教えてくれました。前年出場し、優勝した人です。私とGhozalyは模擬裁判大会のアジアカップに出場した直後で、国際人道法ロールプレイ大会に強く惹かれ、興味を持ちました。
Ghozalyさん:大会への出場は、居心地のよい環境から一歩踏み出す新しい経験でした。模擬裁判は基本的に国際人道法に関する大会です。私たちは法学部生ではなく、法に関する知識基盤は十分ではありませんでした。新しい用語と情報を処理するのは大変で、先生の助けなしには成し得ませんでした。それでも、未知のものに取り組むのはとにかく楽しいことでした。
Rukhsoraさん:私は3年生も終わりに近づき、卒業後を考え始めた時期でした。進路を模索する中で、特定の分野が自分に合うか否かは試してみないとわからないことに気が付き、国際人道法の分野で、さまざまな機会に挑戦しようと思いました。
チーム:2段階のプロセスを踏みました。1つは、ロールプレイの主題についての「基盤づくり」です。主催者から送られるシミュレーションの課題を通読して、主に教科書を用いて国際人道法の関連箇所を参照し、基礎を積み上げていきました。それを基にシミュレーションのシナリオをいくつか作り、図書館でロールプレイの練習をしました。すごく楽しかった。Notionでトラックシートを作り、自分たちが何をしているか、しようとしているかを、各々が把握できるようにしました。先生も練習に参加してくださり、法的な点やそれ以外についても、有益で建設的なフィードバックをくださいました。時にはキャンパス外で、ルームメイトや同級生の助けも借りて、担当以外の役も演じるなど、様々な練習を重ねました。
Photo credit: Aaron Sheppard
チーム:毎週ディスカッションを行い、後半はミーティングも頻繁に設けました。私たちは、各自の意見や仕事の進め方に、お互いオープンに向き合っています。このコミュニケーションスタイルはとても効果的で、国際法の分野にふさわしいと審査員からも評価されました。加えて議論の実践に関わり、平野先生が貴重な指導をしてくださいました。自分たちの主張を、関連する法や理論で裏付ける重要性を説くとともに、現実世界を考慮した実践的要素を推論に取り入れるよう促してくださいました。このようにして、自分たちの議論の説得力を高めました。
チーム:平野先生は、大会準備に向けてメンターが果たす役割に精通されています。 全てを指導するわけではなく、次に取るべき行動、目指すべき地点のヒントをくださいました。 大会前は、どちらかというとコンサルタント兼コーチのような動きをされました。隔週でミーティングを行い、チームの状況や取り組んでいる課題、時にはケーススタディについて話したり、法的な知識を深めたりすることもありました。シミュレーションの練習で使用したシナリオの多くは、先生からのご提案でした。私たちは大会で求められる要素やテーマを知らないため、とても助かりました。大会期間中、コーチは学生のパフォーマンスを見守ることができます。競技後には先生の元に集まり、反省とフィードバックをいただいて、次のシミュレーションに活かすことができました。 本当に思いやりのある先生で、学生のウェルビーイングや心的健康にまで大変気を配ってくれます。教室の中でも外でも、先生との協働は素晴らしいものでした。
チーム:予測不能なのが一番大変です。試験でどの箇所が出題されるか準備段階ではわからないので、幅広く国際人道法をカバーしなくてはなりません。本番では、課題が出されてからシミュレーションに入るまでの時間は30分だけ。記憶を素早くたどりながら最も適したものを見つけるのが最も難しい作業でした。次に、いかに正しく問いをたて、それに正しく答えるか、という難題もありました。例えば、刑務所の看守や拘置所の子供たちに会う場面では、声のトーンはどうあるべきかなど、自分のキャラクターを超えないようにしつつも、一定の限界まで自らを追い込む意識が重要です。
迷いについて言うと、やはり私たちは法学部生ではありません。他大学のチームはみな法学部生で、ICRCの経験を持ち、国際人道法を実践している教員の指導を受けています。そのため競争相手全員にかなわないのではないかという恐れがありました。国際人道法ロールプレイ大会も「ジャン-ピクテ・コンペティション」も、常に小さな迷いがつきまといましたが、それでも挑戦は阻まれませんでした。
Photo credit: Aaron Sheppard
Thu Thuyさん:大会で出会った選手や審査員との友情やつながりは、大切なものの1つです。 いつか本当にこの分野が進路となったとき、キャリアパスを構築する上でコネクションが重要です。 それから、大会出場により国際人道法の知識と理解が深まりました。一番大きな収穫は、出場の過程で将来の目標が見つかったことです。「ジャン-ピクテ・コンペティション」は参加者にとって「一生ものの革命的な体験になる」と言われていますが、確実に私の人生にも大きく影響しました。大会以降、 夢や目標を達成するための必要なステップを見極めて、自信をもって行動できるようになりました。
Rukhsoraさん:平野先生の言葉を借りると、「『ジャン-ピクテ』への参加は、国際人道法の修士プログラムを1週間集中的に受講するようなもの」です。非常に限られた時間で、国際人道法の具体的なトピックが多く語られます。 時間を制限され、焦りとストレスを感じている時、人の記憶力は増します。競技中に起こった出来事は、まだ鮮明に心に残っています。大会で様々な役割に扮するうち、この分野での仕事は私には激しすぎるかもしれないと気づきました。国際人道法では特に現場で働く場合、多くの活動がリスクを伴います。 私は感情的で敏感な人間だと自覚しており、現時点では、これは最適な分野ではないかもしれません。
Ghozalyさん:以前から難民問題に興味がありましたが、「ジャン-ピクテ」から帰ってきたとき、この問題を解決するために自分がしたいこと、なりたいものが見えた気がしました。「ジャン-ピクテ」で、私の目は大きく開かれ、人生の教訓を見出しました。世界では既に多くの若者が学び、戦争で被害を受けた人たちを救うべく活躍していると知り、触発されるとともに謙虚な気持ちになりました。この大会が正に学生時代のハイライトでした。得難い経験です。
チーム:人道支援には軍事的側面と、純粋な人道的側面とがあります。 そのため国際人道法は「戦争法」とも呼ばれています。 国際人道法のルールはほとんどの場合遵守されていますが、万が一反すると、即座に世間とメディアの注目を集めることになります。この事実は、大会に参加したなかで学んだものです。大会を通じて、参加者は疑似的に実地経験を積むことができるだけでなく、総合的な正しい理解に至ることができます。もしこの話を深堀りしたければ、お気軽にご連絡ください!
Photo credit: Aaron Sheppard
チームは努力と忍耐、模範的な能力をもって、国際人道法ロールプレイ大会国内予選2022優勝という目覚ましい成果を残し、国際大会である「ジャン-ピクテ・コンペティション」に出場しました。 彼らの偉業は、情熱を追求し、困難を受け入れ、機会を逃さないことの重要性を教えてくれます。このストーリーをきっかけに、世界にポジティブに働きかけられるよう、自らの可能性を探求していきましょう。
2年間のオンライン授業も終わりましたね。最高な学生生活にしていきましょう!とにかく生きて、笑って。そう、思いついたアイディアを実行しましょう!