2018年度 科学研究費助成事業による研究 No.5

研究課題:日本語教育における災害時情報リテラシーの教育法の開発

研究代表者:本田 明子

研究内容

日本語教育というのは、日本語を第一言語としない人たちを対象とする言語教育です。この研究では、地震などの大規模な自然災害時に、必要な情報を得て、状況に応じて適切な発信をする能力、「災害時情報リテラシー」の教育法の確立を目的としています。「災害時情報リテラシー」とは、災害という非日常的な文脈のなかで、①その状況において機能しているあらゆる情報源を利用して情報を入手し、②その情報の信頼性を確認し取捨選択したうえで、その情報にもとづいて必要な行動をとり、③さらにその情報を必要とする人に向けて発信し、共有することのできる能力を指します。この①~③の過程においてどのような問題が生じ、それを解決するためにどのような能力や知識が必要となるのかを明らかにします。

研究動機

2016年4月におきた熊本地震で、私が勤務するAPUがある別府市でも震度6弱の揺れを経験しました。このとき、避難を余儀なくされた学生の行動等について、アンケート及びインタビューによる調査を実施しました。調査の結果、留学生たちが災害時に情報を得ようと努力していたこと、しかし情報が多すぎてどうしたらいいかわからず、自分よりも確かな情報を持っているだろうと思われる人のことば(口コミ)に左右される傾向も見られたことがわかりました。口コミは効果的に働いた例もありましたが、逆の場合も多く見られ、デマに惑わされたという事例だけではなく、特定の避難所の居心地がいいという情報により、その避難所に留学生が集まりすぎて、定員をオーバーするといった問題が生じたり、文化の違いから地域住民との間に摩擦が生じかねない状況もあったりしたことがわかりました。また市役所等での聞き取りでは、日本に長期滞在する留学生に対して、外国人観光客などの一時滞在者への正確な情報発信を期待する声も聞かれました。こうした期待は、2020年の東京オリンピックに向けてますます高まることが予想されます。災害時に起こりうる問題を防ぐだけではなく、一時滞在者への支援の担い手を育てるためには、情報の入手、取捨選択、自立的な判断と情報発信という情報リテラシーを養うことが非常に重要となると考えました。

研究の特色と意義

災害時情報リテラシー教育の方法を開発することは、ほかの場面における情報リテラシーの教育にもつながります。情報リテラシーは、学習者が地域の一員として生活し、地域社会での役割を果たすために役立ち、社会につながる日本語教育において欠かせない能力です。こうした能力を備えた学習者が増えることは、さまざまな人がともに助け合いながら暮らしていける多文化共生社会の実現につながるものと考えています。


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