2017年度 科学研究費助成事業による研究 No.9

研究課題:The Staff Oasis: The role of staff break rooms for hospitality employees' wellbeing and performance

研究代表者:齊藤 広晃

研究内容

接客業には一般的に長くて規定外の労働時間、低賃金と過度の仕事量のイメージが付きまといます。にもかかわらず、接客業界にいる従業員は顧客に対し、質の良いサービスの提供が求められています。したがって、彼らは大抵自身の感情をコントロールし、親切な態度を見せるために、「感情労働」(英:emotional labor。他人から観察をしうる顔や身体の表現をするために必要な感情コントロール)を行うことが求められます。しかし、感情労働に関する過去の研究が示すように、本当の感情を隠したり、もしくは偽りの感情を見せる行為は感情の不安定化をおこし、ひいては従業員の幸福度の低下につながりかねません。感情労働から生じうる負の影響として、組織にとって、サービスの質の低下から従業員の離職率の上昇や組織パフォーマンスの低下まで、甚大な対価がかかるのです。この研究は、従業員休憩室が感情労働関連の課題を改善するポテンシャルをもち、従業員の幸福感を増進させ、従業員の顧客サービスのさらなる向上につながることを示すものです。
さらに、従業員の文化背景が、個人が組織の内部環境で得る体験のあり方に強い影響を与えるというこれまでの研究の示唆からは、個人の文化背景によって、休憩室を利用する経験、従業員の幸福度と顧客サービス・パフォーマンスの関係が変化する可能性が考えられます。この論点を整理し、より包括的な枠組みを作ることを目指して、この研究では文化環境の異なる2カ国、オーストラリアと日本のデータを比較することにしました。この2カ国とも増えつつある国内外の訪問客を受け入れるために、接客業界の発展に並々ならぬ努力をしています。

研究動機

従業員に対するインターナル・マーケティングが人気になりつつあり、組織が従業員の福利厚生(労働者保険、報酬、従業員手当てなど)を重視するようになりましたが、過去の研究は建物や小売店の設備といった職場環境のハード面に着目してきました。しかし、従業員休憩室に主眼を置いた研究は、特に接客業界という従業員の幸福度がパフォーマンスに直結する業界においてはあまり見られません。この研究は従業員休憩室が従業員をリフレッシュさせ、身体的・精神的・社会的な能力をリセットし、より良い顧客サービスを提供できるようにすることを提唱する点において独創的なものだと考えています。

研究の特色と意義

分析的・多方法アプローチを用いてこの複雑な課題を検証することで、この研究は従業員休憩室の運営面を理論的かつ実践的な視点から解明します。提起する方法論やその意義が理解され積極的に応用されることで、日本とオーストラリアのホテル業界に貢献しうると考えられます。


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