2017年度 科学研究費助成事業による研究 No.3

研究課題:地方独立系小規模映画館の顧客価値創造メカニズムに関する日・英比較研究

研究代表者:金井 秀介

研究内容

この研究は、地方独立系小規模映画館(以下小映画館)の顧客価値創造メカニズムについて、日本とイギリスの比較を通じて、経営資源の観点から明らかにすることが目的です。小映画館は国内映画産業の多様性保持においても重要な存在です。大規模映画館(シネコン)の隆盛に比して小映画館が減り続けていますが、中には顧客から支持され、地方においても安定経営を続ける事例があります。そうした小映画館にはシネコンにはない強固な顧客支持層が存在することがわかってきました(成功例である大分市の「シネマ5 」では、総売り上げに占める会員売上比率は約40%であり、会員一人当たりの年間平均鑑賞映画数は約18 回)。
研究方法:文献による理論研究に加え、日英両国の小映画館各10 館(日本は北海道から沖縄、イギリスもGlasgowからCardiff、Bristolまで)でのフィールドワークを行います。
研究計画:まず、以下の3点に関する研究を進めます。
1.両国における小映画館を含む映画興行業界の構造の整理
2.両国の地方におけるシネコンの経営状況の分析
3.両国の地方小映画館の成功事例、失敗事例の分類と類型化
その上で、最終的にシネコンが創造し得ない顧客価値を創り出す小映画館の経営資源メカニズムの解明を目指します。

研究動機

日英両国の比較事例研究は存在しますが、地方に焦点を置いた小規模映画館経営に関する包括的な研究は極めて限られているからです。

研究の特色と意義

1.コンテクスト戦略によるユニークな顧客価値の創造
映画作品(コンテンツ)ではなく、その映画作品をどう見せるのか、つまりコンテクスト(映画館そのものに関するハード要素、映画館経営側と顧客側の間に作り出されるソフト要素の集合体)をどのようにマネジメントするのか(コンテクスト戦略)によって、それぞれの顧客にユニークな顧客価値を創造するメカニズムが解明されます。
2.地方の活性化
小規模事業(中小企業)に関する経営戦略面での研究は、地方の経済や文化の活性化に対する効果が期待できます。
3.クリエイティブ産業領域での経営学的研究の進展
将来日本の基幹産業の一つに期待されるクリエイティブ産業(映画)における、経営学的研究貢献の一助と考えられます。
4. 映画以外のクリエイティブ産業における小規模事業への研究波及効果
例えば、近年イギリスでは書店の大規模化が進行しており、独立系の街の小規模な書店は経営的に厳しい状況にさらされています。とはいえ、街の独立系小規模書店も独創性があり、かつ地域の消費者に支持される書店の事例もあります。コンテクストをマネジメントすることで顧客価値を創造し、持続的競争力を可能としていると考えられます。


ページトップへ戻る