2012/12/18

社会連携セミナーで中村覚准教授(神戸大学)、松尾昌樹准教授(宇都宮大学)のセミナー開催

2012年12月15日(土)、中村覚准教授 (神戸大学大学院国際文化学研究科)、松尾昌樹准教授 (宇都宮大学国際学部) をお招きし、「中東政治学のリサーチデザイン」と題した社会連携セミナーを開催しました。



今回の「社会連携セミナー」は、APUと複数の中東研究グループが共催する形をとりました。冒頭、本学の吉川卓郎准教授(アジア太平洋学部)によるあいさつに続き、共催グループを代表して末近浩太准教授(立命館大学)より今回のセミナーの趣旨説明がありました。2011年から続く中東政治変動いわゆる「アラブの春」は、従来的な中東研究の認識や方法に対する大きな挑戦となり、中東政治のリサーチデザインを再考する必要性が生起しました。今回の報告は、こうした新たな潮流を具現するものとなりました。

最初の報告「新オムニバランシング論と予防外交の課題:サウディアラビアのシリア外交を事例に」で、中村覚准教授(神戸大学)は、国際政治学のモデルであるオムニバランシング(全方位均衡)論をサウディアラビア外交の事例から説明されました。中村氏によれば、中東におけるオムニバランシングの事例の多くは、指導者の保身のためのものであり、その意味で今後想起しうる地域的脅威は、弱国の(国内と国外がリンクした)代理戦争であると論じました。

昨今のサウディアラビアのオムニバランシング行動の場合、シリアを対象にしたものが増加しているが、中村氏によれば、もともと同国は建国当初から、国家指導者が国内の主導権を独占する形で同様の外交政策を継続してきたとのことでした。しかし、2011年8月以降のサウディアラビアの行動の背景には、国内からの批判への恐怖と、さらなるシリアの弱体化促進という狙いがあったという。中村氏の報告は、国際政治の理論と地域研究という大きく異なるアプローチを、時間をかけて巧みに融合させた力作でした。

松尾昌樹准教授(宇都宮大学)の報告「湾岸アラブ諸国における権威主義体制:移民、労働市場、産業構造の観点から」では、今日の湾岸アラブ諸国権威主義体制を説明するうえで、極めて示唆に富んだモデルが提示されました。松尾氏によれば、従来的なレント依存型国家仮説は限界に達しており、それに代わり「湾岸型エスノクラシー」の形成が進んでいるという。

報告では、湾岸型エスノクラシー概念の整理に続き、クウェートとバハレーンの労働市場分析を中心に、統計を用いたエスノクラシーのパターンの説明、移民向け労働市場のオフショア化などの説明がありました。松尾氏は、外国人労働者に大きく依存した湾岸経済の国籍別分業体制が、逆説的に自国民全体の不満解消や、そして自国民雇用者の利益拡大といった、国民のエンパワーメントにつながってきたという、新たな視座が提供されました。

中村氏と松尾氏の発表後、質疑応答の時間が設けられ、全国から集まった研究者、大学院生に加え、外部からの参加者や本学学生からも多くのコメントや質問が寄せられ、セミナーは盛況のうちに終了しました。

今回のセミナーは吉川卓郎APS准教授の招待により実現したものです。  

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