学長ノート

3大学設置不認可問題に思う

2012/11/14

本間 政雄 元副学長

田中真紀子文科大臣による3大学新設不認可問題は、結局一転認可で終わったが、「大学が多すぎる。安易な認可行政が大学乱立を生み、質の低下を招いた。質の確保に向けて認可のあり方を見直すとした田中大臣の問題提起は正しい」とする論調が多かった。

しかし、仮に以前のように「原則抑制」(新設、定員増を認めない)としたら、福祉、医療、情報など人材がニーズ急増している分野をどうするのかといった問題や、大学設置によって若者の定着と地方の活性化を図ろうとする自治体の切実な要求をどうするかといった問題がある。そもそも日本の高等教育(大学、短大、高専4・5年)進学率56%はOECD加盟国中決して高くはないという指摘もある。

ここで考えるべきは、「大学の質の低下」の原因は何かという問題だ。大学の「乱立」に歯止めをかければ、質の低下が止まるのか?そもそも進学率が30%台だった20年前、大学の質は維持されていたのか?そもそも「大学教育の質」とは何をさしているのか?
こう考えていくと、課題は大臣やマスメディアが考えるほど単純ではないことが分る。問われるべきは、高校以下の学校教育のあり方(課題設定力や考える力の育成)、高校と大学をつなぐ選抜のあり方であり、体系性を欠くカリキュラム、個々の教員任せの講義の内容と水準、一方通行型が主流の教授方法、安直な成績・卒業認定のあり方、教育者としてのスキルを欠いたまま教員になれるシステムなどではないのか?
今後の設置認可のあり方を検討する際には、問題の本質を踏まえた議論を是非ともしてもらいたい。



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