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2025/03/14
祝 辞
APS、APMの卒業生の皆さん、GSA、GSMの修了生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんはAPUで先生たち、クラスメート、先輩や後輩、職員、研修先や留学先で出会った人たち、アルバイト先の上司や仲間など、多くの人と関わり、支えられ、鍛えられて今日の日を迎えました。
APUのグローバルな環境において、さまざまな文化と接して悩み、乗り越え、APUでしか体験できない学びを進めてきました。これまで学生の学びを支えてくださった保護者やご家族の皆さま、本当にありがとうございました。APUを代表して、心からお祝いを申し上げます。
来月2025年4月、APUは開学25周年を迎えます。25年前、APUは、学生と教員の半分が非日本人という、当時としては想像を絶する新しい国際的大学として設計されました。その時、718人の入学者(国内学生472人、国際学生246人)を迎えてスタートしたAPUは、いまや6000人を越す規模の大学になりました。大学開設にあたっては、大分県、別府市、産業界から多大なご支援をいただきました。その後も、大分県民、別府市民の皆さんから大変大事にしていただきました。皆さんも、アルバイト、課外活動、学外学習でお世話になったことと思います。別府、大分を第2の故郷と呼んで、卒業から何年も経って、パートナー、子供と共にAPUを訪問する卒業生もたくさんいます。今後のAPUは、学生の出身国・地域の多様性はもちろん追求し続けますが、それに加えて、年齢や社会経験などの多様性を持った学生が参加する新しい大学作りに挑みます。APUのこれからを楽しみに見ていてください。
さて、卒業にあたって、皆さんに2つのお願いをしたいと思います。
1つ目は、正しく生きてほしい、ということです。人格(character)という言葉があります。人格は自ら作るものです。皆さんの人格は、皆さんのこれからの人生の中で、皆さんが何を考え、何を感じ、何を決めるのか・・・そういった日常生活の中で決まっていきます。自分の行為、言葉、態度が自分で恥ずかしくないと思えるものか、常に考えてください。法律や規則を破らなければ大丈夫だとか、人に見つからなければ良いとか、そういった次元の人生を生きないでください。勇気を持つこと、困難に負けないこと、正直であること、忠実であること、人に共感すること・・・こういったことを実践し続けることは、本当に意義のあることです。
2つ目は、一人一人の人間を大事にしてほしい、ということです。APUは世界の大学の中でも、類い稀な多様性を持つキャンパスを創り上げてきました。多様な国や地域、文化、習慣、宗教などを背景とする学生が集うのがAPUです。そういった文化や考え方の違いがあることを前提に、さらに個人個人を認め合い、大学コミュニティのメンバーとして過ごした経験は、これからの人類社会のあり方を先取りするものです。APUではこういったありかたを「インクルーシブネス」と呼んで、大学づくりの基本としています。皆さんも、インクルーシブなAPU体験を生かして、これからの人生で出会う人たちを大事にしてほしいと思います。同時に、APUを経験した仲間(先輩、クラスメート、後輩)も大事にしてください。
いま、世界の多くの国で、「自分たち」とは異なる「他者」を悪者にし、排除することで支持者を集める政党の力が強まっています。アメリカ合衆国では、女性やマイノリティに対する差別的発言を繰り返し、平等を保障する社会の仕組みを破壊することを公言したドナルド=トランプ大統領になってしまいました。第二次世界大戦中に600万人のユダヤ人虐殺という世界史的事件を起こしたドイツは、ナチスの行動を許してしまったことに対する国民全体の反省を大切にしてきましたが、反移民、反イスラムの姿勢を明確に打ち出し、幹部がナチスへのシンパシーを公言する政党、ドイツのための選択肢(AfD)が先月末の連邦議会選挙で第2党に躍進しました。こういった現象は、イタリア、フランス、スウェーデンでも見られ、さまざまな国において自国第一主義、反外国人思想、反ジェンダー平等・多様化を主張する勢力が、世界の分断と自国社会における「主流派」優遇を押し進め、時計の針を逆に回そうとしています。
APUで育った皆さんにお願いしたい。APUは、私たち一人一人が、自由と平和を追求する人間として、人間の尊厳に対する畏敬の念を持つことが何よりも大切だという信念を持つ大学です。これからの皆さんの長い人生において、先ほど述べたように、一部の人たちが諸悪の根源であって、彼らを排除することが社会にとって良いことである、というような主張に出会うことがあると思います。そんな時には、APUで培った、一人一人をリスペクトし、受け入れる感覚を思い出してほしいのです。APUで学んだ皆さんには世界を救う力があります。
皆さんは、今日をもってAPUの学生であることをやめ、APUのアラムナイになります。今後の皆さんの活躍が大学としてのAPUの発展を支えますし、APUの発展が皆さんのキャリアを支えます。その意味で、皆さんはこれからもAPUのメンバーです。
今後の人類社会は、国際紛争、貧困、気候変動、環境汚染など多くの地球規模の課題を解決していかなければなりません。皆さんが、APUで身につけた専門的能力、世界の友人と支え合うネットワークの力、そしてコロナ禍を乗り越えたレジリアンスを生かして、それぞれが解決に向けてリーダーシップを発揮してくれることを願います。
皆さんのこれからの人生に幸多からんことを祈ります。ご卒業、本当におめでとうございます。
2025年3月14日
立命館アジア太平洋大学
学長 米山 裕