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学生生活|社会貢献
2000年に開学した立命館アジア太平洋大学(APU)。
別府市十文字原に広がる 天空のキャンパス には、 これまでに134の国・地域から学生が集まり、
多様性豊かな環境で共に学び合い、学生は異文化理解を深めてきた。
さまざまな分野で活躍する卒業生の中から、APUで培った知識や経験、国際感覚を生かし、
日本や世界で挑戦が始まっている。
2007年から4年間、アジア太平洋学部(APS)で学んだRAI Sharad ChandraさんとJOSHI Ratala Dinesh Prasadさんは、卒業後にNPO「YouMe Nepal Trust」(ユメ・ネパール・トラスト)を設立した。日本で働きながら、母国のネパールに学校をつくる活動を展開している。
RAIさんはネパール東部の貧しい村の出身だが、名門私立の小学校から高校まで奨学金をもらいながら勉強に励んだ。高校3年生の時に日本の文部科学省の招待で来日。日本への関心が高まり、日本への留学を決意して、英語で勉強できる留学先としてAPUに進んだ。JOSHIさんはネパール西部の貧しい農村出身で、RAIさんとは小学校時代からの親友。ライさんの半年後にAPUに留学している。
2人は在学中、地元・別府市や大分市の小学校などに出向き、子どもたちと国際交流をするボランティアに取り組んだ。別府市亀川に住み、市内の観光・商業施設でアルバイトもしたRAIさんは「別府の人は私を優しく受け入れてくれました。別府のことは何でも知っていますよ。別府は日本の実家のような存在です」と話す。RAIさんは日本語と英語で学内新聞を発行し、大学のイベントやさまざまな国の出来事などを紹介する活動もしていた。
「APUではいろんな国の友達と知り合えました。そのグローバルさは大きな魅力。誰とでもすぐに友達になれる力が付きました」
卒業の半年ほど前。2人で将来について考えていた時に、RAIさんの故郷の村の子ども全員が中学受験に失敗するという事態が起こる。「自分たちを育ててくれた祖国のために何かしたいと思っていたタイミングだったので、質の良い教育を提供するためにネパールに学校をつくることを思い付いたのです」と当時を振り返る。
インドネシアの貧しい子どもたちの修学支援活動に取り組む「hoshizora Foundation」(ホシゾラ・ファウンデーション)。小学生から高校生までの間、教育を受けるために必要な経済的支援をする支援者を世界から募るだけでなく、支援者との手紙のやりとりなどのコミュニケーションを促進することで、子どもの学習への動機付けなども支援している。
インドネシアの小・中学校は、授業料は無料だが、教科書代や通学費などが払えずに学校に行けない子どもが大勢いる。ホシゾラを設立したのはAPUに留学していた4人のインドネシア人学生。1日の食事代などで何気なく使っていた千円が、インドネシアでは子どもの1カ月の教育費になると気付いて毎月千円を母国に送る活動を始め、在学中の2006年にホシゾラを立ち上げた。当時は30人ほどの学生を支援していたが、現在では千人を超える子どもを支援するまでになっている。
「将来はNGOをつくり、社会起業家として活躍したい」という国際経営学部(APM)2年生のMUHAMMAD Arif Fauzanさんは、留学前にホシゾラでボランティアを経験した。ビジネス部門で働き、子どもに会いに来る支援者や取り組みを視察する団体のツアーアレンジなどを手掛ける「ホシゾラ・ツアー」を企画。大学でも、「ホシゾラAPU」というサークルをつくり、ホシゾラと連携して活動している。
「いつかこの取り組みを、世界中の子どもたちを支援する活動に広げたい。学生の中から生まれたホシゾラのアイデアが大きく発展したように、APUにはそれを可能にする、国際的で、物事に積極的に挑戦することを後押しする環境があると思います」
佐伯和可子さん(2008年卒業)
大分市で、不登校の子どもたちに学習の場を提供するフリースクール「ハートフルウェーブ」を経営する佐伯和可子さんは、APUの3期生だ。2006年に国際経営学部(APM)を卒業し、APUの大学院に進学。08年にはMBA(経営学修士号)を取得している。
佐伯さんが不登校生の学習支援に携わるようになったのは、学部1年生の時。アルバイトで家庭教師をした生徒がたまたま不登校だったという。
「学校に行かないと急激に勉強する環境がなくなり、進学が難しくなって人生の選択肢が少なくなるという現実を知り、いろんな個性に合わせたいろんな教育現場がもっとあっていいと思ったのがきっかけです」
多様な教育現場を提供するという事業の実現に向け、「自分が求めれば与えてくれる環境があった」というAPUで、佐伯さんは多くを学んだ。国内各地のフリースクールを訪問し、友人のつてで海外の日本人学校やさまざまな形態の教育現場を視察。どういうやり方が日本や大分に合うか、世界中を探し歩いた。
現在は大分市を拠点に、フリースクール、夏休み中の学童保育、家庭教師、通信制高校のサポート校という4本柱で事業を展開している。4月には新しい施設が完成し、市外の生徒も通えるような下宿制度も始める。「教室の数を増やして、いろんな教育の場を提供したい」とスタッフの養成にも取り組む佐伯さん。「子どもたちを受け止め、教育し、社会に送り出す」というこの仕事に人生を懸けている。