国際社会に広がる「志」のネットワーク。
平和で豊かな世界の創造をめざし、行動を続けている卒業生たち。
2004年に第一期生を送り出して以来、次代を主体的に切り拓いていくAPUのDNAは、彼らを通して全世界に広がっています。
オフィスにて、ポーランド出身の同僚と。プライベートでも仲良くしている
他企業に勤務し、シンガポールに赴任中のご主人もAPU卒業生。お互いに理解しあい、めざすキャリアを追求していける関係
ものづくりの総合力を武器に世界での存在感を高めてきた日本の産業界。その大きな柱といえる総合電機メーカーの海外法人で、森川さんはマネージャーを務めている。「欧州・CIS地域の経営助成担当として勤務しています。
該当エリアに40社以上あるパナソニックグループの経営状況を把握し、数値と課題を日本の本社へ報告しています」と語る森川さん。会社を正しい方向へ導いていくための羅針盤となるアカウンティングに関わる仕事だ。
「海外で働くことに憧れて今の会社に入社しました。フィンランド販売会社での研修や海外関連会社の監査などを経験するなかで、国際的な仕事の醍醐味を今実感しています」。
APUでは積極的に国際学生と交流し、相手を尊重して相手の立場で物事を考える「国際感覚」を磨いた。「人種や性別関係なく、誰とでも話ができるのはAPUで培った大きなスキルだと思っています。それは、多様な国籍の人と協働する今の仕事にも非常に役立っています。また、さまざまな人とのコミュニケーションを通して度胸がついたのかもしれません。私の仕事相手はトップマネジメントを務める大先輩の方々が多いのですが『物怖じしない』とよく言われます」。豊かな個性が集うAPUのキャンパスで磨かれた力を活かして、今後は「さらに新しいことにチャレンジしていきたい。また、女性社員のロールモデルになるような存在をめざして働きたいと思っています。
みなさんもAPUで挑戦する4年間を。そして世界へ羽ばたいてください」と、森川さんは熱く語ってくれた。
スイス・ジュネーブで国連職員として働いているAPU卒業生Morse Floresさんと。先住民統治のレクチャーと、国連職員をめざす学生のキャリアセミナーのために国連平和大学を訪問。
カリブ海に面した国・コスタリカ。その首都サンホセから西へ約20キロほど進んだ場所に国連平和大学大学院の本部キャンパスがある。国連平和大学大学院は、世界の精鋭が集まり国際法や安全保障などの専門研究に取り組む国際機関だ。そこで浪指さんは「日本の平和学」をテーマにした研究に取り組んでいる。「日本人の平和思想の歴史、また平和学の発展経緯などを調べています。日本語で書かれた文献を積極的に使用し、それを英語に翻訳。平和を専門とした大学から『日本人の平和』について発信することに意味があると感じています」と語る浪指さん。第二次世界大戦など日本の戦争の歴史を踏まえた考察も深め、最終的には多様な検証を取り入れた「日本人の平和」について発信することが大学院での目標だ。
「国連のホームページで国連平和大学の情報を見かけたことが進学のきっかけ。人を守る仕事がしたくて一旦は防災・警備関連の企業に進みましたが、国際平和を望む志を突き詰めたいという思いが消えず、今ここにいます」と浪指さんは言う。「APUは実に 刺激的な環境でした。チャレンジに積極的な学生たちとの交流は、今につながる『視野の広さ』を与えてくれたと思います」。利害関係の複雑な紛争を解決するには多角的な視点からのアプローチが不可欠。APUで育んだ力が今、国際平和研究の舞台で活かされて いる。「今後は各地で調査活動を行い、『平和』を再定義したい。そして、紛争地で仕事をしているAPU卒業生のように、現場に飛び込み研究者として世界平和に貢献する」こと、それが浪指さんのめざす未来だ。
現地の住民たちと一緒に学校建設、そして学校運営に取り組んでいる。
ライさんがネパールの学校について紹介した、日本の小学校での出張授業。
ネパールの農村部には十分な数の学校がなく、2時間ほど歩いて通学する生徒も少なくない。またカーストの低い層の子どもが進学できなかったり、家事を手伝うため女子の生徒数が少ないことも課題だ。YouMe Nepal Trustは、ネパール出身のAPU卒業生のライさんやジョシさんが設立したNPO団体。ネパールのすべての子どもに質の高い教育を届けることを目的に募金活動を展開し、学校建設に取り組んでいる。「私はネパールの貧しい村に生まれましたが、国から奨学金を受給して教育を受け、APUにも進学できました。この活動は母国への恩返しの一つです」と語るライさん。自身の出身地でもあるネパール東部のコタン県に学校を建設し、さらに1年後には英語で学ぶ中学校をつくる予定だという。また、農村部への図書館の建設、奨学金制度の設立といった事業も計画中。日本でも在日ネパール大使をゲストに招いたチャリティーイベントを開催するなど、活動の輪は確実に広がりつつある。
世界をよりよくしていくために私たちは何を大事にすべきか、彼らは熱く語ってくれた。「まずは『自分のためだけでなく必要がある人たちのために生きる』ということ。そして『境界線のない世界を知る』ことです。みなさん、どうぞAPUで収穫の多い4年間を過ごしてください」。