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2026年3月14日。APUキャンパスには、普段とは少し違う熱気が漂っていました。九州工業大学と東京科学大学の学生たちが、ノートパソコンを抱えながら次々と到着し、すでに頭の中ではコードを書き始めているような雰囲気でした。開催されたのは「Kyutech × Science Tokyo × APU Joint Hackathon 2026」です。
私たちは、ビジネスを学ぶ学生3人と社会科学を学ぶ学生1人のチームでした。競争相手は、日本でもトップクラスの理系学生たち。正直に言えば、最初は「場違い」にも見えました。しかし実際には、その違いこそが私たち最大の強みになったのです。
SIDDIK MD TANVIR(国際経営学部1回生, 研究・システム担当);SAMEER MOTWANI(国際経営学部1回生, 開発担当);今井 貴子(国際経営学部4回生, プレゼンテーション担当);LIMBACO JEANA SOPHIA ANTOLIN(アジア太平洋学部1回生, 戦略・構想担当)
ハッカソンで最も重要なのは、アイデアです。高い技術力があっても、「解決する価値のある問題」がなければ意味がありません。そしてこの点で、APUという環境は、理系だけでは得られない視点を私たちに与えてくれました。
APUでは、学生の半数以上が日本国外から来ています。私たちは日々、「自分が育った文化」と「今生きている文化」の間を行き来しながら生活しています。話す言語も違えば、沈黙の意味の受け取り方も違います。相手にとっては当たり前のサインを、私たちは読み違えることがあります。そして、その「見えないズレ」が最も大きな問題になる場所の一つが、日本の就職活動です。この気づきから生まれたのが、MIRUでした。
「これは言語の問題ではなく、文化の問題です。MIRUは、その見えない空気を見える化します。」MIRUは、日本で就職活動を行う外国人向けのAI面接コーチです。日本企業の人事担当者を再現したAIが、フォーマルで感情をあまり表に出さない「日本式面接」をシミュレーションします。そして、実際に日本企業が重視するとされる5つの観点から、面接内容を静かに評価します。その後、英語に切り替え、「面接官は本当は何を考えていたのか」を解説します。たとえば、就活生がこう言ったとします。
「御社で自身のキャリアを形成したい」
しかし、面接官側には、
「この就活生は「与える」より、「得る」ことを重視している」
と受け取られてしまうことがあります。
MIRUは、まさにこの「見えないギャップ」を埋めるために作られました。音声対話型で、Claudeを活用し、日本の有名企業の実際の企業情報をもとに設計されています。
APUで行われた3日間のハッカソンで、私たちはそれぞれの強みを最大限に生かしました。SAMEERは、ほぼ休むことなくコーディングを続け、技術設計を担当しました。
アイデアを実際に動く音声AIプロダクトへと形にしてくれました。私(SIDDIK)は、研究とコンテンツ開発を担当し、日本の採用文化の実態を踏まえながら、MIRUのロジック設計を進めました。JEANAは、チーム全体の進行管理を行い、72時間を通してチームをまとめ続けてくれました。そして、貴子は、まさにMIRUが目指していた「架け橋」そのものになって、審査員に対し、日本語でプレゼンテーションを行ったのです。
結果として、私たちは銅賞を受賞しました。九州工業大学と東京科学大学という日本有数の理工系大学から15チーム以上が参加する中で、表彰台に上がった唯一のAPUチームでした。
「テクノロジー系の大会は、理系学生のためのものだ」そんな考え方は、今でも根強く存在しています。高度なコードを書き、複雑なシステムを設計できる人だけが、ハッカソンに参加する資格を持つ。MIRUは、その考え方に真正面から挑戦したプロジェクトでした。
APUは理系大学ではありません。しかし、APUには別の強みがあります。100以上の国・地域から来た学生たちが、一緒に生活し、学び、議論し、何かを創り上げる環境です。月曜日の授業ではインドネシア出身の学生と議論し、水曜日にはガーナ出身の友人と課題に取り組み、金曜日には大阪出身の学生から日本のビジネス文化を学ぶ。そんな日常の中で育まれるのは、単なる知識ではありません。
「自分自身が経験してきたからこそ、他の人には見えない課題に気づける力」です。日本の就職面接における文化的ギャップは、多くの理系学生が自然に思いつく課題ではありません。それは、「異文化の中で居場所を探した経験」から生まれた視点でした。MIRUが機能したのは、単にエンジニアによって作られたからではありません。
その課題を「内側から理解している人たち」によって作られたからです。それこそが、APUの強みだと思います。そして、その力は、どんなプログラミング言語よりも応用可能な力なのかもしれません。
もちろん、MIRUはまだ完成した製品ではなく、72時間で作ったハッカソン用プロトタイプにすぎません。しかし、本当に大切なのは銅賞そのものではなく、今回の経験が証明したことです。APUの学生は、「自分たちを前提としていない場所」に入っていき、他の人が気づいていない課題を解決し、そこで確かな存在感を残すことができます。
今回のハッカソンのテーマは、“Crossing Borders, Creating Connections”でした。多くのチームにとっては、これはテーマやコンセプトだったかもしれません。しかし、私たちにとっては、日常そのものです。
もし今、「自分には向いていないかもしれない」「自分のための場所ではないかもしれない」そう思って、挑戦をためらっているなら。MIRUが示したものを、ぜひ見てください。そして、そのチャンスをつかんでください。
ハック(hack)とマラソン(marathon)と組み合わせた造語。特定のテーマに対して、アイディアを出し合い、期間内でアプリやサービスを開発し、その成果を競うイベント。