立命館アジア太平洋大学

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学長ノート

卒業生へのメッセージ (2018年春学位授与式)

2018/5/7

卒業生の皆さん、ご卒業本当におめでとうございます。保護者の皆様をはじめとするご列席の皆様と共に皆さんの門出をお祝いしたいと思います。

APUと協定を結んでいる東北地方有数の漁港の町、気仙沼には出船送りという行事があります。遠くアフリカまで漁業に出る遠洋漁船を見送る行事です。

今日は、これから広い世界に羽ばたく皆さんに、3つのことをお話したいと思います。

1つ目は、なぜ、これほどまでに、国際化が大事だと叫ばれているのかということです。日本で最初に文明が起こったのは北九州の地でした。それは、朝鮮半島の南部で鉄を産出したからです。交易によって鉄を入手したので農作業が格段にはかどり、生産性が石器時代に比べて急上昇したことが主因です。動物は生態系の中にある資源の制約の中でしか生きられない。しかし、人間は生態系を超えて交易を行うことで豊かな文明を築いてきました。つまり、グローバリゼーションは、昨日、今日始まったものではなく、文明と共にスタートしたのです。近代の高度産業社会は、産業革命の3要素であった化石燃料、鉄鉱石、ゴムという3つの資源を基に築かれています。しかし、資源は各国均等に存在するわけではなく偏在しています。これらの資源を豊富に有するアメリカのような大国は自国ファーストでも生きていけます。でも、世界のほとんどの国は日本のように3つの資源を持っていない。だとすれば、日本を含む多くの国々は、自由な交易の上にしか豊かな社会を築くことは出来ません。これが、グローバリゼーションが大切だといわれている根源的な理由だと思います。

2つ目はチャレンジについてです。世界には220ぐらいの国や地域があり様々な人が暮らしている。その様々な人々やそれらの国の文化や伝統を理解して初めてスムーズな交易が可能となるのです。交易とは単なる物質のやりとりではない。人間が、もっと言えば、人の心が介在するのです。なぜ、ダイバーシティが重要だといわれるのか。それは、世界が多様だからです。人はみな違う。国や地域もみな違う。ダイバーシティを理解して初めて人は寛容になり価値観の押し付けを避けるようになり、世界の多様な人々とコミュニケーションが可能もしくは容易になるのです。皆さんは、90の国や地域が集う「若者の国連」、僕はAPUをそう呼んでいますが、で鍛えられてきたので、ダイバーシティの理解については世界中どの大学の卒業生にも負けないと僕は思っています。自信を持って世界に飛び出してください。僕はAPUの2030年ビジョンがとても好きで誇りをもっています。皆さんが広い世界に散らばり、自分のやりたいことや好きなことに打ち込めるそれぞれの持ち場を見つけて、APUで学んだことを生かしながら自分のアタマで考え、それを行動に移すことによって世界を変えていく。何という素晴らしいビジョンでしょう。それが、shape your world の本当に意味するところだと思うのです。現在の世界には暗雲が立ち込めていると悲観的に見る向きもあります。一部で台頭している排外的な動きや独裁的な傾傾などに、立命館の建学の理念である平和と民主主義が脅かされているという見方も十分成り立つでしょう。しかし、人間の歴史はジグザグの繰り返しです。SDGsやCOP23など未来に希望が持てる取り組みもたくさん行われているのです。皆さんは、広く世界を見渡して、やりたいことを見つけて行動に移し世界を変えてください。見つからなければ、見つかるまで航海を続ければいい。長い人生です。焦る必要はどこにもありません。中には、自分1人が行動しても世界が変わるわけではないとクールに世界を見ている人もいます。その通りです。歴史上、世界を変えようと行動した人の99%は失敗しています。つまり、彼らは世界を変えることができなかったのです。しかし、その冷厳な事実を知りながら、行動しなければ何一つ世界は変わらないと残り1%未満の可能性に賭けてチャレンジし続けた人が連綿と続いてきたからこそ、歴史は進歩し、世界は良くなってきたのです。皆さんは、何も恐れることはありません。若い皆さんには、何度でもチャレンジする十分な時間がある。仮にうまくいかなかったとしても、自分はみんなと同じだったんだ、多数派だったんだと思えばいいだけの話です。

そして、3つ目は常に「学ぶ」ということです。皆さんには、これからも学び続けてほしいと思います。今年、2018年は、日本が近代化を成し遂げた明治維新から150年の節目の年に当たります。明治維新はなぜ成功したのでしょう。それは、徹底的に世界に学ぼうとしたからではないでしょうか。明治維新からわずか3年後、まだ新政府の骨格さえ固まらぬ時期に政府首脳の大半が外国に学びに出かけたのです。岩倉使節団といいますが約2年近くをかけて世界を周りました。でも、そのおかげで日本は急速な近代化に成功したのです。ローマ帝国の初代皇帝であるアウグストゥスではありませんが、まさに、「ゆっくり急げ」です。慢心からは何も生まれない。謙虚に学ぶ姿勢が何よりも大切です。皆さんは、これからもたくさんの人に会い、たくさん本を読み、広い世界を旅することによって皆さん自身をさらに鍛えてください。人間は「人・本・旅」によってしか学ぶことはできません。そして、学ぶことは、間違いなく人生の選択肢を増やすのです。今、皆さんはスキー場にきています。楽しみ方が二つある。がんがん滑るのと滑る人を黙って見ているのとどちらが楽しいと思うか、どちらかに手を挙げてください。僕が言いたいことは、分かりますね、スキーを学んだ人は両方選べるのです。今日はがんがん滑ろう、あるいは昨日滑り過ぎて筋肉痛だから今日は見ていようと。しかし、スキーを学ばなかった人は見ていることしかできないのです。どうか、何事でも、貪欲に学び続けてください。学べば確実に一つ人生の選択肢が増えるのです。それはとても楽しいことだと思います。

気仙沼を出港した漁船は半年、あるいは1年後に帰ってきます。皆さんも、いつでもAPUや校友会の集まりに帰ってきてください。世界には既に33の校友会のチャプターが設立されています。APUのいわば分身です。144の国と地域からAPUに来て学び、約1万5000名の卒業した先輩が世界中で活躍しています。みんなAPUファミリーです。我々は、大きな1つの家族なのです。そして若い皆さんの新しい人生におけるチャレンジこそが、この大家族を元気づけるのです。

最後に、はなむけの言葉を一つ贈ります。

Go where nobody has gone,
Do what nobody has done

皆さんの飽くことのないチャレンジを心から応援しています。

2018年3月16日
学長 出口治明



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