学長ノート

卒業生へのメッセージ(2025年秋学位授与式)

2025/09/19

ご来賓の皆様、教職員の皆様、ご家族の皆様、そして卒業生の皆様

本日、私たちは皆さんの人生における最も重要な節目の一つを祝うためにここにいます。立命館アジア太平洋大学の卒業生として、皆さんはチャレンジングであるとともにチャンスに満ちた世界への入り口に立っています。別府市十文字原のこのキャンパスまではるばるやって来た皆さんは、当初の不安や孤独を乗り越え、出会いを想像もしなかったような友人たちとグローバルなネットワークを築きました。そして、皆さんが手にする学位の名にふさわしい知識、分析力、創造力を身につけるために懸命に学び、そしてついに、卒業生の仲間とともにここに座り、新たな挑戦に立ち向かう覚悟を固めています。私はここに、皆さんが達成したものと皆さんの驚異的な成長を、心から祝福いたします。同時に、その間に経験したであろう、眠れない夜、キリキリした胃の痛み、アドレナリンの高まり、プロジェクトチームのメンバーとの固い絆、そしてその後の楽しいご飯会など、皆さんの努力のあらゆる瞬間を称賛いたします。

皆さんが成し遂げたことは驚嘆に値するものですが、それはまた、まさに世界が皆さんの力を切実に必要としている時代に成し遂げられたのです——多様な視点、協働の精神、そして前向きな変化を生み出そうとする決意がそれです。今日の世界は前例のない課題に直面しています——スーダンやミャンマーで数百万人に影響を及ぼす避難民危機から、ガザやウクライナでの人道上の被害に至るまで。しかしこれらは誰か他人が解決するのを待つような、遠く離れた問題ではありません。これらはまさに、皆さんが受けてきた教育に関わる重要な問題なのです。

これほど大きな課題に直面している中で、個々人の行動がなぜ重要なのか疑問に思うかもしれません。しかし、歴史が示すように、変革はまさに皆さんのような人々から始まるのです。専門知識を持ち、グローバルな視野を備え、他者が橋渡しできないと考える両岸に橋を架けることを恐れない人々です。APUで皆さんは、国際関係、ビジネス、サステナビリティ等を学ぶだけでなく、それらを実践してきました。言語の壁を乗り越え、6か国から集まったチームメイトとのグループプロジェクトで対立を解決し、多様な人々が互いに尊重し合いながら協力し合うことで解決策が生まれることを学びました。

皆さんがこれから社会人としての一歩を踏み出し、地域社会での生活が始まれば、ここで学んだすべてが試される瞬間に直面するでしょう。皆さんの未来の状況を4つ思い描いてみましょう。

例えば、最初はこのような状況です。東京の役員会議室、ジャカルタの開発プロジェクト、あるいはシリコンバレーのスタートアップ企業かもしれません。部屋は文化の違いによって分断されています。東洋対西洋、伝統対モダン、ローカル対グローバルといった具合です。他の人はそこに対立を見出しますが、あなたはそこでまさに協働が生まれようとしているのを見て取ります。自分とはバックグラウンドが大きく異なる人と出会った時、あなたはその違いを他者に負けない自分の強みとして受け入れるでしょう。なぜなら、あなたがAPUで学んだように、最も革新的な解は異なる世界観がぶつかり合い、全く新しいものを生み出す時に生まれるからです。これが、多様性を強みとして受け入れることです。

2つ目はこんな状況です。あなたの入る業界では、キャリアの中で一度ならず、完全な変化を何度も経験するでしょう。AI技術、気候変動、地政学的な変化が、あなたがまだそれらを学んでいる間でも、ルールを書き換えるでしょう。他の人々は、時代遅れになることを恐れるかもしれません。しかしあなたは生涯に渡る学習を脅威ではなく、チャンスとして前に進んでいくでしょう。なぜなら、変化に適応することは、単に生き残りのためだけでなく、ダイナミックな世界では適切な方法であると同時に、価値ある存在であり続けるための方法でもあることをAPUで学んだからです。これこそが、生涯学習の実践なのです。

3つ目の状況では次のような岐路があります。あなたは、利益に結び付くことと正しいこと、自分のキャリアアップと弱い立場の人を守ること、真実を語るか沈黙を守るかという選択に直面しています。妥協を強いられるプレッシャーは強いでしょう。そんな時でも、あなたは誠実さをもって行動するでしょう。なぜなら、ここで過ごした時間を通して、正義、人間の尊厳、そしてすべての人の平等な価値は、プレッシャーに屈して放棄されるような単なる理想ではなく、誰も見ていない時でも自分が自分であり続けるための原則であることを学んだからです。あなたの誠実さが、あなたの人生を形作るのです。

4つ目の状況はこうです。社内の非効率なプロセス、コミュニティでの不平等、業界での持続不可能な慣行かもしれません。誰もが「当たり前のこと」として受け入れているそんな問題にあなたは直面しています。「ここではそんなやり方はしない」と言う人がいるかもしれませんが、あなたは大胆なアイデアと行動力で、状況を変えるべく人々をリードしていきます。なぜなら、前向きな変化を起こすことに許可をもらう必要はなく、本当に必要なのは勇気と創造性、そしてより良いやり方は常にあり得るという確信なのだと、APUは教えてくれたからです。これこそが、革新的なリーダーへの道なのです。

2025年9月卒業の皆さん、皆さんは不確実性の中にではなく、可能性の中に向かって卒業します。世界は皆さんにあらゆる課題を解決することを求めているわけではありません。人類の最も偉大な協働プロジェクト、すなわち、より平和で公正、インクルーシブでサステナブルな未来を築くというプロジェクトに、皆さんならではの貢献をしてくれることを求めているのです。その仕事は今日から始まります。

2025年9月卒業の皆さん、おめでとうございます!私たちは皆さんを心から誇りに思い、皆さんがこれから素晴らしい影響を各方面に与えていくのを、楽しみにして見守っています。

ありがとうございました。ボン・ヴォヤージュ!

2025年9月19日
立命館アジア太平洋大学
学長 米山 裕



  • LINEで送る

PAGETOP