8月8日、ボローニャ大学のAnna Martini助教授と東北大学のDavid Nguyen特任准教授を迎え、RCAPSセミナーを開催しました。
[ブイ教授(APS)によるレポート]
先ずMartiniボローニャ大学助教は、2016年から2020年までの東北での調査について発表しました。東日本大震災と津波の記憶について、陸前高田市と福島市で調査を行ったものです。この研究では、「影響」というアプローチで、東日本大震災の遺産を保存するために、訪問者と住民の経験を理解しようとしました。発表は、ダークツーリズム、文化遺産、防災を統合する学際的なものでした。
質疑応答では、ダークツーリズムの概念と災害軽減策の解釈について質問が寄せられ、また、研究の限界や災害記憶へのアプローチについてのコメントもあり、会場から大きな関心を集めました。発表者は質問を丁寧に受け止め、それぞれの質問で取り上げられた重要な論点について見解を述べました。
次にNguyen東北大学特任准教授を中心とした座談会が行われました。議論の中心は、東日本大震災の物語を構築することと、震災の遺産が東北地方の観光にいかに寄与できるかということでした。討論では、(1)観光地としての東北の認知度、(2)震災後の東北の観光開発の課題、(3)観光客は誰か、どのような観光が適しているかなどについて、聴衆から意見が出され、議論が行われました。またMartini助教のセッションと関連づけながら、震災後の観光の実現性や可能性、また、甚大な自然災害に見舞われた観光地の商品やストーリーを標準化するための手法やアプローチについての論点を議論しました。
このセミナーと座談会は、自然災害をどのように記憶し、そこから何を学ぶのかという問題意識を、学生や教員に投げかけました。日本の経験から得た教訓は、自然災害の多い他の国にも当てはまると思います。