【吉田 香織 教授(APS)によるレポート】
ヴ教授は講演でタイムリーな話題を扱いました。南シナ海の緊張によるアジアの安全保障環境の急激な悪化で、ベトナムや他の東南アジア諸国は難しい選択に直面しています。ヴ教授はまず、東南アジアの現在の政治経済の状況を概説し、この問題に関係するASEAN主要国の政治姿勢について分かりやすく解説しました。例えば、米国や日本に寄りになった国々もあった一方で、そうならなかった国々もありました。また、これらの国々が米国や中国、日本、ロシアをどのように見ているのか(例えば、味方、脅威など)がその国の特定の政治姿勢や、問題となっている海域に対する行動を部分的に説明しています。ヴ教授によると、特にベトナムは不安定な立ち位置にあり、ベトナムと他の東南アジア諸国の国内政治が未来に、そして米国や日本の政治にとって不透明な意味合いを持つという認識で締めくくりました。
聴衆の大半は学生(学部生と大学院生)で、その多くをベトナム人学生が占めました。質疑応答では活発で示唆に富む議論が交わされ、最近の若い世代や学生が不安に思ったり、歯がゆく思ったりしている現実の状況や重要な問題が反映された質問もありました。学んで知っていた知識と、日本に来てから(または母国以外の場所で)聞いた知識との違いに対する怒りや困惑を示した学生もいました。現代社会に存在する圧倒的な情報の中から正しい情報を得る方法についてヴ教授に尋ねる学生もいました。これらの質問や議論は有意義で、すべての観客の知的好奇心を満たすものだったに違いありません。