APUの多文化環境で学ぶための導入教育として開講されている1回生演習は、 今年から「新入生ワークショップ」に名称が変更されました。セメスターの前半では、異文化間コミュニケーションについての講義を受け、 ワークショップで事例を交えながら討論を行うという形式で授業を進めてきました。
 そして、セメスター前半の終了時に「異文化間コミュニケーション」をテーマにした大プレゼンテーション大会が行われたのです。
 与えられたテーマにどのようにアプローチし、どう表現するか。国内学生・国際学生共同で、 自ら「異文化間コミュニケーション」を体験しながら準備を進めたプレゼンテーション大会の様子をご紹介します。


市長からのミッション
今回の設定は、APUを一つの自治体《APU市》と想定し、学生たちはAPU市の職員として、市長に向けたプレゼンテーションを行うというものです。
 そのAPU市長からのミッションは次の通り。
「APU市は、2000年の市制施行の際に、<国際相互理解都市宣言>を行いました。市民間における国際相互理解の意識も徐々に高揚しはじめています。しかし、当面の課題として次のようなことが考えられます。諸君の考えやアイデアを聞かせてください。」
(1)現在世界中で<国際相互理解>が重要視されているが、それはなぜか。もう一度分析し、確認してほしい。
(2)(1)を踏まえた上で、異文化が混在している国や地域、都市、企業な どにおける具体的な異文化理解、国際相互理解 のための取り組みを調査してほしい。
(3)APU市の市民体系(英語と日本語が共通語。約70の国や地域から 集まっている市民)を考慮しながら、APU市における異文化相互理解のためのプランを示してほしい。
準備の中でも“異文化間コミュニケーション”
市長のミッションに従い、各ワークショップ単位で国際学生と国内学生を交えたチームを作って発表準備を進めていきますが、その過程で言葉の壁や文化の違い、個人の考え、価値観がぶつかることもあります。そう、この小さなグループにも「国際相互理解」が必要なのです。また、言葉は通じても、環境の違いなどから生まれるギャップもあります。一つの目的に向けて仲間と話し合い、作り上げていく中にも「国際相互理解」の大きなヒントがあるのでした。
きわだったTAの存在
この「新入生ワークショップ」では、TA(ティーチング・アシスタント)と呼ばれる学生たちが、授業運営をサポートしています。TAは、隔週で行われるワークショップの際に、各教室に1人ずつ配置され、議論などがスムーズに進むようにコーディネートする役割を担っています。今回の大会に向けても、自分が担当するワークショップの発表内容について相談に乗り、適切なアドバイスを与えるなど、新入生にとっては頼りになる‘先輩’です。
 そしてプレゼンテーション当日、ここでもTAは、司会進行を含め見事なコーディネーターぶりを発揮していました。各チームの発表後の質疑応答の時間には、発言を恥ずかしがって黙っている学生たちにTAから質問を投げかけたり、議論に発展するような提言を行なったりと、プレゼンテーション大会を大いに盛り上げてくれました。
「ウケるだけではダメ」という厳しい採点
  聴講する学生一人ひとりには採点表が配られ、各項目を厳しくチェックし採点します。内容がいくら良くても、発表の際に説明がわかりにくい、はっきり聞き取れないといった点も審査の対象になります。逆に会場を盛り上げてはいたけれど、中身に乏しかった点なども判断されますので、採点は冷静に、かつシビアに行われました。

評価の高かったNo.13チーム・・・「財布を拾った二人」を
ドラマ仕立てで発表し、相互理解を促進させるプランを提案


同じテーマを与えられても、40チームあれば40通りのアプローチと表現方法があることがよくわかる大会となりました。ひたすらレポートを読むチーム、民族衣装に身を包み、民族舞踊を披露したチーム、漫画を使って発表したチームなど、まさにAPUの多様性を象徴したものでした。
 ここで、採点の結果、評価が高かったチームのひとつ、No.13チームの発表内容を紹介しましょう。彼らは「財布を拾った二人」というシチュエーションをドラマ仕立てで発表しました。ドラマは2本立て、どちらも同じ状況でありながら、ほんの些細なことからまったく違う結末を迎えるのでした。

ドラマ(1):道で財布を拾った二人。一人は日本人、もう一人は国籍不明です。お互い「警察に届けよう」としているのに、言葉が通じないため、相手の行動が理解できません。一人が「僕が警察に届けるから」と言って財布を拾い上げると、相手は盗むのではないかと勘違いして引きとめる。二人とも良いことをしようとしているのに、言葉が通じないために誤解を生じるばかりか、偶然出会った見ず知らずの二人の間に信頼関係も存在しないため、不信感だけが残り、不愉快な思いをしてしまいました。

ドラマ(2):シチュエーションは(1)と同じです。しかし、決定的に違うのは、片言の英語で喋ったり、ジェスチャーを交えたり、お互い懸命に自分の言いたいことを伝えよう、相手の言いたいことを理解しようと努力している点です。この必死の思いがやがて通じ、結果、二人は拾った財布を持って、肩を組みながら警察に向かうのです。

 その後このチームは、ドラマでの相互理解の方法を一例として、異なる国やグループとのより良い相互理解を築くために、努力と工夫を重ねている実在の団体の活動などを紹介した上で、APU市における相互理解促進のプランを掲げました。
 このように20分の持ち時間の中で、伝えたい内容をどれだけ効率よく表現できるか、またどれだけ印象づけられるかといった点が評価のポイントとなります。このチームは、誰にでもわかりやすい‘ドラマ’という手法を冒頭に使うことで、聴いている他の学生の関心を集め、その後例を挙げて自分達の考えたプランの効果を具体的に説明できた点などが、高く評価されたようでした。


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