INTERVIEWS
VOL.03
- 別府市役所 職員
- アベリア(安部 純子)Abelia(Abe Junko)
世界と心をつなぐ APU生と別府の架け橋
アベリアさんが語る、世界共通の「Give」の心と、湧き続けるAPU生への想い
アベリアさんこと、安部純子さんは別府市役所で勤務し、市民のサポートを行っている。そんなアベリアさんをAPUで知らない国際学生はいない。
住民登録などの手続きから地域との交流、そして時には心のケアまで、生活のあらゆる場面で学生たちがたどり着く場所。それがアベリアさんの元だ。
APU設立25周年という歴史の中で、まさに“別府の湧く大地”としてAPUの学生たちを支えている存在だ。その縦横無尽な活動の幅広さゆえに、「ただの市役所職員じゃないよね?」「いったい何者?」——と巷で囁かれる、どこか不思議なオーラを纏う存在でもある。
今回、その「別府の湧く大地」に、APU生との関わり、そしてその尽きることのない熱い想いの源について尋ねた。
伝説を生む、家族以上の絆——「今日は子守と布団集め‼‼」
「最近急に寒くなったから、みんな『布団が欲しい』って言いだして。今日は地域の人たちと布団いくついるんだ~って、集めるのに奮闘していたところです。あとね、別府で出産した留学生の子が、話を聞くと誰も面倒見てくれる人がいなくて八方塞がりで大変そうだったから、私がBabyみとくから授業に行きなさい。って約束してて。今日はBabyをおぶって子守もしなきゃ!」
インタビューの冒頭から、留学生との深い関わりを感じる会話が止まらない。
行政的サポートから、時には子育てまで。彼女の「役割」に境界線はない。
「母であり妻であり、一個人として国の未来を背負って学びに来ている彼女たちの尊い志を、子育てや行政システムでは対応しきれない課題によって途絶えさせたくない。人間力や地域のやさしさで一つひとつ乗り越えていきたい。」と語る彼女の支援には、目に見えない深いストーリーがある。
「そういえばこの間ね~~」と豪快に笑いながら留学生との思い出を語るアベリアさん。彼女の周りには、数々の人情ドラマも生まれている。どの話も思わず心が動くようなエピソード。まさに伝説だ。
彼女は、小中学校での交流会、街の子どもたちを巻き込んだキャンプ、地域全体を巻き込んだアートイベントや音楽フェスなど、留学生と共に数多くのイベントに携わってきた。そして何をするにもスケールは大きく。別府だけでなく、地球レベル、それこそ宇宙レベルで、100年先を見る。そのほうがワクワクするでしょう!とアベリアさんは語る。
卒業生の結婚式にサプライズで海外へ飛んだことも一度や二度ではない。中でも彼女が何よりも嬉しい瞬間は、卒業生が海外から自分の家族を連れて別府に会いに帰って来てくれる時だという。
「異国で独りで学ぶのは、家族にとってとても心配なこと。だから、私たちができることを精一杯やってきた。その結果、留学生の家族とも仲良くなれる。言葉や文化が違っても、心は世界共通なんだと改めて感じます。
それに、卒業生が別府を”第二のふるさと”と思って帰ってきてくれることが本当に嬉しいですね。最近も卒業生とうどんを食べに行きましたよ。その子、苦労して頑張り抜いた一期生でが、家族を連れてとの再会という特別な日に「豪華なご馳走ではなく、学生時代にいつも食べていた、あったかく懐かしいあのうどんが食べたい。」と言ったので、肩ひじ張らずに、その子の大好きなうどんを、その子の子どもとご両親みんなで食べに行きました。」
留学生との間に生まれた絆は、いまや血縁関係を超えた「家族」そのものだ。
海を越えて辿り着いた「Give」の精神
生まれも育ちも別府という生粋の別府人であるアベリアさんは、中学卒業後、海外へ単身留学した経験を持つ。
「単身、異国で学ぶ日々は、不安や寂しさ、恐怖など、様々な感情と向き合うことが多かったです。でも、その都度たくさんの人に助けられ、支えられ、本当に良くしてもらったんです。みんな「I want」「I need」だけじゃなく、「Give(与える)」の心を持っているんですよ。
自分の留学経験のなかで、尊いものをたくさん教えてもらったから、留学当時から「別府に戻ったら絶対にその恩返しをしたい」と決めていました。異国で学ぶって、不安や寂しさなどいろんな感情を抱えるでしょ?それでも学びにきてくれていて、この別府での生活を心から楽しかったと思えるようにしたい。そんな強い気持ちが芽生えたことが、今に至るきっかけです。」
この経験と想いが、APU開学時からの留学生サポートへと繋がった。
さらに彼女の「Giveの精神」を支えているのは、戦争を経験した先人たちの姿だという。
「私の原動力は地域のおばあちゃんたち。彼女たちは、戦争でたくさんのものを失い、辛いことを抱えながらも、どこの国の人か敵か味方かなんて関係なく、目の前の人の命を慈悲深く祝福し、大切にしてきた。戦争でたくさんのものを失ってきた分、Giveの心を忘れず支え合うことで、次の世代、そのまた次の世代と平和な世界が続いてその循環が繰り返していくべきだと思う。心と心を通わせて、思いあって仲良くなること、支え合い助け合うこと、それがより良い未来を築くことにつながると信じています。」
彼女はそれを「未来への返報」だと捉え、APU生と地域住民との間に強固な土壌をづくりを続けている。
彼女の土壌づくりはアイデアもユニークで、その一つに『GPS(Gross Personal Smile)』という独自の指標で笑顔を生み出すことは何でもする、というものがある。数値等の評価ではなく、笑顔が指標のため、顔を見あわせることで自然と心も繋がっていく——という愛の溢れる仕組みだ。
湧き続ける温泉のようなエネルギー
APU生が巣立つ未来、アベリアさんが期待することを最後に尋ねた。
「この別府で知り合って学び合った仲間が、一人ひとり種を持って、それぞれの場所で育てていったらもう無敵だと思うんです。『Shape Your World』って、あれは嘘じゃない。本当にできると思う!」
彼女は、別府を「世界のあるべき姿を持ってきた場所」だと語る。だからこそ、学生たちが根を張り美しい花を咲かせられるよう、あるいはたくましい大木になれるよう、この街で土壌づくりを続けている。
そして、そのエネルギーは温泉のように沸き続け、尽きることがない。
「みんなの中にある種が、未来を築く基盤になって世界中に繁殖して広がっていけばいいなと思います。そして、私たち別府の住民や、私自身も、その種を育み、世界中に繁殖させていくためのパートのひとつ。このスピリットが、世界中に循環していくのが楽しみでならないんです。
あとほら、温泉ってみんなすっぽんぽんで ふぇ~ って湯に浸かるでしょ。別府が、そんなふうに自分らしく居られる場所であり続けて欲しいな。」
諦めずに楽しみ、心の繋がりを大切にする。それが、アベリアさんがAPU生に送り続ける、別府の湯よりも熱いエールだ。
※取材は2025年10月23日に行いました。掲載されている肩書や所属は、当時のものです。
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