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森 善文・宏子 (Mori Yoshifumi, Hiroko)

INTERVIEWS

VOL.02

洋食屋「馬家溝(まちゃこ)」 オーナー夫婦
森 善文・宏子Mori Yoshifumi, Hiroko
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看板メニューはボルシチと「親心」―別府の母ちゃん父ちゃんがいる洋食店―

1973年の創業以来、別府の地で愛され続けている
洋食屋「馬家溝(まちゃこ)」

看板メニューの「ボルシチ」をはじめ、創業当初から変わらない味を求め、日々多くの人々が訪れる人気店だ。さらにこの店を特徴づけているのが、APUの開校当初から代々続く国際色豊かなアルバイト学生たちの姿だ。

今回は、そんな店を守り続けてきたオーナーの森さんご夫婦に、国際学生たちとの深い絆や彼らに対する想いについて話を伺った。

馬家溝(まちゃこ)店内の様子
店内の様子

働きながら学び育つ-馬家溝で受け継がれるDNA

馬家溝のスタッフの多くが国際学生であることは、今やこの店の日常的な風景だ。APUの開校当初から彼らをアルバイトとして受け入れてきた森さんご夫婦は、彼らは店の活気を生むだけでなく、日々の営業を支える”なくてはならない戦力”だという。

「APUの国際学生のアルバイト第一号は、うちで元々アルバイトしていた子のお友達で。その子の紹介で来た子。それからは紹介が紹介を呼び、みんな卒業間近になると後輩を連れてくるので、これまで途切れずにたくさんの子がアルバイトに来てくれています。」

アルバイトの面接時には、学業との両立や生活面、どれくらい稼ぎたいかまでしっかり話をしたうえで受け入れるそうで、学生たちも安心して学業とアルバイトを両立できているようだ。

「留学生たちは、学費の他、いろんなことにお金がかかるでしょ。だから、アルバイトで生計を立てながら学業も頑張っていて。昔でいう”苦学生”。みんな本当に一生懸命でガッツがある。だから卒業後はみんな一流企業で活躍していたり、独立して素晴らしいビジネスをしていたり、みんな成功していて誇らしいです。」

そう自慢げに彼らについて語る口調は、まるで“成長を見守ってきた親”そのものだ。
それもそのはず。あれこれと世話を焼き、時には厳しく、実の我が子のように接してきたと語る。

オーナーの森さんご夫婦

厳しさの裏にある親心 現場で学ぶ日本の流儀と成長

馬家溝のアルバイトの魅力は、単にお給料だけではない。森さんご夫婦が教え込む「日本の流儀」こそが、彼らの未来のキャリアを支える財産となっている。

「私も厳しくしていたからね。実の親よりうるさいなんて言われながら、でも日本の企業に就職希望の子もいるから、口うるさく母ちゃんみたいにしてたんですよ。中には学業が疎かになりそうな危うい子もいてね。もう心配で心配で2人でうるさく言ってましたよ。それでもやっぱ、こんなうるさく厳しくしても続く子ってのは、ハングリー精神がある子たち。いい成績も残してるみたい。」

時間を守ることから衛生観念、そして日本社会が大切にする「暗黙のルール」。彼らにまだ根付いていない部分は徹底的に教え込んできたという。

「何から何まで、とにかくうるさく伝えてきた。そしたら就職活動で成功したって、そんな報告もあったなぁ。」

そして、厳しさの傍らで、ご夫婦は決して手を抜かなかったことがある。それが「食」だ。

「思いっきりご飯が食べられることは魅力みたいですね。学業とアルバイトを両立させる中で、1食しっかり食べられるって、すごく助かるんだよね。だから、食事だけは絶対に手を抜かずに、賄いとしてしっかり食べさせてきた。うちはやかましいけど、食べるものに区別や差別は一切なく、我々と同じものを一緒に食べるんですよ。
そうやって、自然と気持ちのつながりも生まれていたんじゃないかな。」

「そのような生活をしていると、母国からご両親が別府にきた時は必ず連れてきてくれてね。彼らは日本で暮らす中で気に入った郷土料理の琉球とか勧めたりして。生魚を食べない国の両親も『こんなに美味しいのか』って驚いていましたよ。」

実のご両親が、我が子の働く姿を見て安心し感動する表情が忘れられないそうで、日本の母ちゃん父ちゃんとしても嬉しい瞬間だという。

オーナーシェフの森善文(もり よしふみ)さん

留学生が教えてくれた、心と心のつながり

彼らと接する中で戸惑いはなかったか と尋ねると、「全くないね。」と口をそろえるお二人。しかし、まだ別府の地で留学生が珍しかった開校当初は、常連客の中に偏見もゼロではなかったという。

「APUが開校してまもない頃は、やっぱ別府の人たちも知らないが故の偏見が、全くないわけではなかった。ただ、彼らの一生懸命仕事をしている姿を見て、しばらくすると『そんなふうに思っていて申し訳なかった』って応援してくれるようになった。みんな、ただ知らないだけで、結局は国境とか人種とか関係なく”人と人”だからね。頑張る姿を見れば尊敬もするし、波長が合えば仲良くもなる。日本人同士だって、家族ですらそうでしょ。」

別府の地域の人たちとAPUの国際学生をつないでくれた優しさが、お二人の言葉からひしひしと伝わってくる。

一方、「彼らから教わることも多いんですよ」と、彼らの姿を通してご夫婦自身が再確認したのは、心と心のつながりの本質だった。

国籍や文化の違いなど関係なく”人と人”として互いに向き合い、心を感じあい思い合うこと――それこそが、心のあり方そのものなのだ。

オーナーの奥様 宏子さん

卒業後も続く「日本の母ちゃん父ちゃん」との絆

育てた我が子たちの話をすると、次々と出てくるエピソードが止まらない。一方、やはり国際学生たちもご夫婦のことを「母ちゃん父ちゃん」のように想っているようだ。

「以前、私が体調を崩して入院したことがあって。それを聞きつけた子が、イチゴを1パック持ってお見舞いに来てくれたり。社長が膝が痛いと聞きつけたらまめに連絡をくれたり。卒業後もずっと気にかけてくれていて嬉しいし、やっぱり可愛いよね。」

「彼女はアルバイト生の中でもほんと成長したよな。初めは日本語も喋れなかった上引っ込み思案だったのに、できることからコツコツしていって、もう先回りして仕事も奪ってやるくらいになりましたね。そういえば母ちゃんと性格が似てるよな。」

「親の背中を見て育つ」ーその言葉のように、彼らもお二人の背中を見てたくさんのことを学び、受け継いでいるようだ。

「留学生たちって長期休暇になると母国に帰省するから、しばらくアルバイトも休むことが多いんだけど、なかには帰らないでいる子がいて、気になって聞いてみたら、『みんな帰省したらお店が回らなくなって困るから』って自ら残ってバイトをしていた子とかもいてね。涙が出るような話でしょ。」

そんな心温まるエピソードも聞かせてくれた。彼らの中に森さんご夫婦のDNAが深く流れていることは間違いない。彼らにとって森さんご夫婦は、まさに別府の母ちゃん・父ちゃん。偉大な存在だ。

アルバイトが書いた絵が飾られている
アルバイトが書いた絵が飾られている

※取材は2025年11月18日に行いました。掲載されている肩書や所属は、当時のものです。

Profile

森 善文・宏子
洋食屋「馬家溝(まちゃこ)」 オーナー夫婦
森 善文・宏子

オーナーの森善文(もり よしふみ)さんと妻の宏子(ひろこ)さんによって営まれている洋食屋「馬家溝(まちゃこ)」は、創業は1973年(昭和48年)で、半世紀以上にわたり地元で愛されてきた老舗洋食店。名物の「ボルシチ」や、秋には「栗のババロア」を求め、多くの人で賑わう。

洋食屋「馬家溝(まちゃこ)」
〒874-0919 大分県別府市石垣東10-2-41(GoogleMap
営業時間:12:00~20:00(19:30L.O.) ※土・日曜~22:00(21:30L.O.)
定休日:月・火曜

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