2025年12月10日(水)、APUにてインクルーシブ・リーダーシップセンター(CIL)主催の研究イベント「Inclusion in Scholarship and Action(研究と実践におけるインクルージョン)」を開催しました。
本イベントは、企業活動と学術研究の両面から、インクルージョンがどのように実践に組み込まれ、またどのような場面で見落とされてしまうのかについて考える機会となりました。B Corp認証企業ZZ Driggsの共同創業者兼CEOであるWhitney Falk氏と、サウスイースタン・ノルウェー大学のDavid Guttormsen博士をお迎えし、講演およびパネルディスカッションが行われました。専門領域は異なりますが、お二人は共通して「私たちが“インパクト”や“成功”を定義する際、誰の声が認識されているのか」という問いを提示されました。
Falk氏は、ZZ DriggsがサステナビリティやインクルージョンをCSR活動として切り離して扱うのではなく、事業モデルの中核に位置付けている点を紹介しました。家具を循環型で長く使い続ける資産として捉え、レンタルやRent-to-Ownの仕組みを提供することで、”ファスト家具”や過剰消費の考え方に挑戦していると説明しました。また、B Corp認証について触れ、インクルーシブなビジネスにおける厳格な説明責任を強調する一方で、近年見られるダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に対する反動にも言及し、企業が採用、仕入れ、ガバナンスにおいて真にコミットしていることを示す必要性が一層高まっていると指摘しました。
一方、Guttormsen博士は、知識の生産における倫理という観点から議論を展開しました。主要なビジネス倫理分野の学術誌に掲載された約7,500本の論文をレビューした結果、社会的に疎外された人々が研究の中心に据えられることは極めて少ないことを明らかにしました。”エリート中心”の研究傾向を批判的に考察し、どのような経験が正当な知識源として認められているのかを問い直す必要があると提起しました。また、社会的立場の弱い労働者や周縁化されたコミュニティと直接向き合う、より内省的で質的かつ課題志向型の研究アプローチの重要性を強調しました。
両講演を通じて、インクルーシブ・リーダーシップは単なる理念ではなく、企業のビジネスモデル、研究課題の設定、さらには個人のキャリア選択にまで影響を与える体系的な実践であることが示されました。本イベントは、象徴的な取り組みにとどまらず、実践と研究の双方において継続的かつ批判的にインクルージョンと向き合う姿勢の重要性を、参加者に問いかける機会となりました。
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APUでインクルージョンの推進に取り組む学生団体「INCrew」の代表を務めています。
ビジネスを通じて社会に意義ある前向きな変化を生み出すことに強い関心を持っています。