アジア太平洋カンファレンス2021:多様性とインクルージョン

アジア太平洋カンファレンス2021:
多様性とインクルージョン

アジア太平洋カンファレンス2021:多様性とインクルージョン

新型コロナウイルスは世界中の人々の暮らしを劇的に変えてしまった。日常生活、職場環境、学校教育、医療現場などの全てが、2019年末の感染爆発によって影響されている。このウイルスは、14世紀にヨーロッパの封建社会を揺るがしたペストや、16世紀にスペイン人征服者が持ち込んでインカ帝国を滅ぼした天然痘のように、歴史を変えた病原体として歴史に名を残すことだろう。現代人は今まさに、第二次大戦後に構築されてきた世界政治・社会・経済秩序が動揺している様を目の当たりにしているのである。

 今世紀の人類が誇ることのできる医療保健上の成果の一つは、国連や市民社会、慈善団体やビジネス・セクターが協働して、HIV/AIDSの感染を抑制するのに成功したことである。2004年にはエイズによる年間死亡者数が170万人であったが、2019年には70万人へと削減することができた。しかし一方で私たちは、その効果が人々の間に一様に及ばなかったことを認めざるを得ない。低所得の人々は、高所得の人々よりも狭い治療の選択肢に甘んじざるを得ない。感染に関して高リスクとされているグループの人々は、社会的なスティグマ(不名誉の印)に苦しまされることが多かった。社会の全ての層の人々を受け入れながらHIV/AIDSに立ち向かうということは、大変な労苦なのである。

 COVID-19も、多様な層の人々に異なった影響を及ぼしている。既往症のある高齢者は、最も脆弱な層と言えるであろう。学齢期の子どもたちは、友達や先生と切り離されたオンライン教育に苦労している。いくつかの業種の労働者は職を失って困っているが、その一方で、エッセンシャル・ワーカーと呼ばれる人々は逆に長時間・長期間働き続けなければならない。契約労働者は、いわゆる正規労働者より高い失業リスクに直面している。その関連で、日本を含むいくつかの社会ではジェンダー不平等が雇用や昇進に関して大きな課題となっている。

 このように現代社会は、新型コロナウイルスに起因する多面的な課題に対し、様々な立場の人々の力を結集して取り組むことが求められている。この緊急事態下にあってアジア太平洋カンファレンス2021は、世界平和と繁栄、社会正義、環境保全、ジェンダー平等、国際開発、グッド・ガバナンス、高次移動可能性、高度な教育など様々な課題に貢献する研究発表を歓迎する。立命館アジア太平洋大学は、このカンファレンスが参加者にとって、新規なアイディアを発表したり、まだ見ぬ知識に出逢ったり、将来の研究パートナーを見つけたりするための扉を開く機会になることを願って開催するものである。

RCAPS センター長 山形辰史

アジア太平洋カンファレンス テーマ アジア太平洋カンファレンス テーマ アジア太平洋カンファレンス テーマ

アジア太平洋カンファレンス2020でのセッションタイトル(例)

  • 多様性の涵養とインクルーシブ・リーダーシップ
  • 文化と地理
  • 教育
  • エンターテイメント、ホスピタリティ、観光
  • 環境と地域発展
  • グローバル・ガバナンスと平和
  • 保健と障害
  • 人的資源
  • 人権
  • ICTとその応用
  • 国際情勢と持続可能な開発
  • 地域発展と社会課題
  • アジアにおける持続可能な開発の展望
  • 社会的排除と不公平
  • サプライ・チェーンとエネルギー
  • 脆弱性と貧困
アジア太平洋カンファレンス トピック

APカンファレンスとは

アジア太平洋カンファレンス(APカンファレンス)は2003年から開催しています。分科会では、毎年幅広いテーマについて発表が行われます。また、著名な研究者等を基調講演者としてお招きし、お話をいただいています。人社系では日本最大規模の英語で開催されるカンファレンスと言われています。


基調講演

大野泉 氏

政策研究大学院大学(GRIPS)教授
前JICA緒方貞子平和開発研究所長
大野泉 氏

プロフィール

国際協力事業団(現在のJICA)、世界銀行、海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)を経て、2002年より現職。2018年10月から2020年9月まで国際協力機構(JICA)緒方貞子平和開発研究所所長を務める。現在、JICA緒方研究所シニア・リサーチ・アドバイザー、(一財)アジア太平洋研究所(APIR)上席研究員を兼ねる。専門は国際開発政策、国際協力、途上国の産業開発、開発とビジネス。プリンストン大学公共政策大学院修士(MPA)。

JICA緒方研究所在職中、2019年にG20議長国として日本が主宰したThink 20 (T20)の「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」タスクフォース共同代表議長を務めた。また2009年よりJICAと共同で、エチオピアとの産業政策対話に取り組んでいる。過去に外務省「ODA大綱の見直しに関する有識者懇談会」委員、「国際協力に関する有識者会議」委員、経済産業省「BOPビジネス支援センター」運営協議会座長等を歴任。

Building Forward Better: コロナ危機から学び、国際開発協力の将来を考える

新型コロナウイルスは、保健危機だけでなく経済・社会全般に甚大な影響を与え、世界中が同時進行で危機と政策実験を共有する、といった点で、未曽有の状況を生み出した。さらにグローバルなパンデミックは、国際協力の重要性を改めて喚起するとともに、私たちが今後の国際開発協力アプローチを考えるうえで重要な、幾つかの問題を突き付けている。第一に、“one-size-fits all”で万能な解決策はなく、国・社会・地域ごとに試行錯誤を通じて最適解を発見する必要があること。第二に、先進国モデルが必ずしも優れているわけではないこと。知識・技術は「北から南へ」一方的に流れるのではなく、多様なパートナーが相互に学び合い、「共創」していくことが重要である。第三に、これらの取組を進めるうえで、デジタル化の恩恵を最大化しつつ、「誰ひとり取り残さない」よう十分な配慮が必要であること。基調講演では、最近の国際開発潮流をレビューしたうえで、これらの視点もふまえて、国際開発協力をさらに発展させていくために(build forward better)どのようなアプローチが求められているのか、日本の取組への示唆を含めて考察する。

主な著書

  • 『途上国の産業人材育成』(山田肖子と共編著)、日本評論社、2021年1月.
  • Leave No One Behind: Time for Specifics on the Sustainable Development Goals (eds. with Homi Kharas, John McArthur), Brookings Institution2019.
  • “A Japanese Perspective on Ethiopia’s Transformation” (with Kenichi Ohno), Ch.7, in Oxford Handbook on Ethiopian Economy, edited by F. CheruC. Cramer, and A. Oqubay, Oxford University Press, 2019, pp.842-857.
  • 『アジアの知日産業人材との戦略的ネットワーク構築:知日産業人材の積極活用・育成・支援への提言』(編著),(一財)アジア太平洋研究所,2017年3月.
  • 『町工場からアジアのグローバル企業へ:中小企業の海外進出戦略と支援策』(編著),中央経済社,2015年4月.
  • Eastern and Western Ideas for African Growth: Diversity and Complementarity in Development Aid (eds. with Kenichi Ohno), Routledge, UK, Apri2013.
  • 『BOPビジネス入門:パートナーシップで世界の貧困問題に挑戦する』(菅原秀幸・大野泉・槌屋詩野と共著),中央経済社,2011年7月.
  • 『日本の国際開発協力』(後藤一美・渡辺利夫と共編著)シリーズ国際開発・第4巻,第6章,日本評論社,2005年6月.
  • 『世界銀行:開発援助戦略の変革』NTT出版,2000年10月.
  • Japanese Views of Economic Development: Diverse Paths to the Market, (eds. with Kenichi Ohno), Routledge, April 1998.

ベストペーパー・アワード(大学院生対象)

アジア太平洋カンファレンス2021では、若手研究者の積極的な論文投稿を推奨する目的で、英語で発表する大学院生を対象としたカンファレンス参加費の免除とベストペーパー・アワードの制度を設けています。詳細はこちら。

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