2023/12/05

RCAPSセミナー「日本の災害記念博物館と3.11の記憶」

12月05日、東北大学災害科学国際研究所災害人文社会研究部門災害文化アーカイブ研究分野専門のJulia Gerster氏によるRCAPSセミナーを開催しました。


講演者Gerster氏は、災害(および暗い歴史)の博物館を研究する際のさまざまな側面について紹介しました。特に、①これらの博物館を研究する上での主要な問題、②これまでの関連研究で取り上げ論じられてこなかった側面、③これらの博物館を研究する際の方法論やアプローチ、等に触れました。そして、日本にある3.11関連の様々な災害博物館(市立、県立、学校などを含む)の調査において、特に博物館の使命声明や展示、および博物館のキュレーターやスタッフとのインタビューから収集されたデータの分析し、災害の集団記憶が形成されるプロセスにおける博物館の役割を明らかにしました。具体的には、「公共の災害博物館は3.11をどのように表現しているか?」、「日本の三重災害の文化的記憶の中でどのような公式のナラティブが作られているか?」などの問いを提示・考察した結果、多くの災害博物館により形成される物語が、困難を乗り越えより良い未来に貢献する、というマスター・ナラティブを支持する傾向があると論じました。

加えてGerster氏は、災害博物館が提示する前向きなメッセージが、地元の災害体験に焦点を当てる傾向と、人災と自然災害の人為的区別を伴う災害リスク低減の視点を持つことで、「原発災害の他者化」に寄与していることを強調しました。また、博物館が提示するメッセージにおいて女性や子供などのマイノリティ・グループの経験については、「受動的」な形でありながら過剰に展示される傾向を指摘しました。

セミナーの時間は約50~60分、その後20~30分程度の質疑応答を行いました。質疑応答セッションでは教員、学生ともにセミナー内容に関して非常に活発な議論が行われました。さらに、その後参加メンバー間でネットワーキングも行われていました。全体的に非常に刺激的で有意義なセミナーとなりました。

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