あらゆる知を融合しマネジメントを科学する。
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概要
学域を超えて新たなコミュニケーション理論を見いだし、“よりよいマネジメント”を構築して現代社会の課題に挑む。
現代社会では、従来のマネジメントでは対応できない状況が次々に生まれています。それは、マネジメントを行うためのコミュニケーションの形態が、急速に変化しているためです。一対一の対面コミュニケーションから、SNSによる一対多、多対多のコミュニケーションへと広がり、さらにはAIやメタバースといった新しいテクノロジーが加わりつつあります。私たちは、そうしたコミュニケーションを理解し、それをベースとした新たなマネジメントを構築しなければなりません。
本研究では、そうした新しいコミュニケーション形態を「トポロジカル・コミュニケーション・アクティビティズ」と名づけて体系化。経営学、経済学、数学、工学、情報科学、さらには社会学、心理学など、あらゆる学問領域や最新技術を横断的に活用し、新しいコミュニケーション理論を確立しようとしています。そして、それをベースに、新時代に適応したマネジメントを構築することを目指しています。
こうしたマネジメント研究に注力する背景には、社会におけるDEI&B(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン&ビロンギング:多様性、平等、包括性、帰属意識)を推進したいという思いがあります。多様な人財が参加し活躍できる社会を創ることが、新しいコミュニケーションを活発化させ、よりよいマネジメントを生み出していくはずですし、その逆に、よりよいマネジメントが、多様な人財が参加し活躍できる社会を創る、ともいえます。そしてそれらの人財が各コミュニティに帰属意識を持ち、そのコミュニティをよりよくしていこうとします。そうした未来を目指し、枠組みにとらわれない発想と行動で、社会実装のできる研究を進めていきます。
新しいコミュニケーション形態「トポロジカル・コミュニティ・コミニュニケーション活動サイクル(TCCAC)」の概念図
※社区、街道、鎮は中国の行政単位 出典:研究代表者が作成。 TCCACは本来3次元図形であるが、便宜的に2次元で描画。
「中国上海市におけるロックダウンの際の新型コロナ感染症対策政策情報のコミュニケーションにかかる考察」において、研究代表者が考案した概念。中国ではTCCAC形態をとった情報のやりとりが非常に迅速かつ短いサイクルで何度も回転して情報のフィードバックが多数行われたことが、徹底したゼロコロナ政策を13億の人口に対して推し進める原動力となった。
新規性・独自性
領域を超え、実務と理論を融合した、革新的なマネジメント研究。
本研究の最大の特徴は、これまでにないコミュニケーション理論によって、よりよいマネジメントを探究することにあります。
現代社会の課題に対応するさまざまなマネジメントについて考察しようとすると、“そこでは今、どういうコミュニケーションをとっているのか”、または、“今後このようなコミュニケーションをとるべきだが、どうすればそれを実現できるのか”という問いに行き着きます。
そのような新しいコミュニケーション理論の構築は、既存の学術研究の領域や方法に依拠していては従来の枠から抜け出すことができません。
そこで本研究では、独自の多面的・融合的アプローチを行っています。例えば、
- 経営学、経済学へのフィードバックを意識しながら、多様な学問領域からの学際的なアプローチを行う。そこでは文系理系といった分類を超え、あらゆる知を融合させる。
- AI、メタバース、量子コンピューターといった最新技術によるコミュニケーションの急激で大きな変化も研究範囲とし、それによるマネジメント、更によりよい意思決定とは何かを研究する。
- “Think Globally, Act Locally”を基本姿勢とし、地域の身近な課題や地元の中堅中小企業の悩みに、世界的視野、先端技術などを動員して実践的に取り組むことで、イノベーションを目指す。
こうした研究姿勢には、研究代表者のこれまでの経験・活動が大きく影響しています。研究代表者は、長くビジネス界で活動し、日本政策投資銀行などでの国際金融実務を通じ、さまざまな国、民族、人種、宗教をバックグラウンドとしたマネジメント、新規事業創成に携わった知見を持ちます。また、台北、北京、マニラ、ジャカルタ、香港、上海など、アジア各地での実務、駐在経験(および、それによる日本語、英語、中国語、インドネシア語の4カ国語を駆使した多文化理解力)を持っています。
本研究は、研究対象領域の枠にとらわれないことも大きな特徴です。例えば現在、注力している領域の一つに、精神・発達障碍を持つ学生への高等教育(大学・大学院の授業)支援があります。メタバースやAIを活用した新たなコミュニケーションによって、従来は参加が困難だった学生たちに新しい学びの場を提供することを目指します。この研究が、多様な人財の能力を最大限に引き出す新しいコミュニケーションとマネジメントのモデルケースとなることを目指しています。
“新たなコミュニケーションによって、よりよいマネジメント、意思決定、戦略策定を探究する”ことのできる場であれば、どこでも本研究の対象となるのです。
出典:Justin B. Craig, Ken Moores (2017) Leading Family Business – Best Practices for Long-Term Stewardship. Praeger.
「ファミリー・ビジネス・マネジメント(FBM)」も研究領域の一つ。日本の長い伝統の中で生き残ってきた、普遍的なマネジメント方式の特徴を、多面的に分析することから、より良いマネジメントと企業の永続性や地域貢献を考察する。図は、その分析に用いるSAGEフレームワーク。
関連研究
中国上海市におけるロックダウンの際の新型コロナ感染症対策政策情報のコミュニケーションにかかる考察
研究代表者

FUKUYAMA Kimihiro
国際経営学部 准教授
当ページの内容をPDF1ページにまとめたサマリーを、こちらから表示し、プリントすることができます。
私は、国際協力銀行と日本政策投資銀行における長年の勤務で、アジアの6都市に駐在し、各国政府や大中華圏ビジネス、各国の財閥やスタートアップといったさまざまなスタイルのマネジメントを目の当たりにしてきました。一方で、現在の地元である大分県で活動をしていると、山間部で交通手段がなく困っているお年寄りの声、人手が足りなくて困っている中小企業の経営者の声などをよく聞きます。
私にとっては、それらはすべて同列で、つながっています。山間部のお年寄りを救いたい。地元の中小企業を助けたい。そのためには、よりよいコミュニケーションとマネジメントが必要です。よりよいコミュニケーションとマネジメントを実現するためには、固定観念や常識、バイアスにとらわれていると、真の姿が見えなくなってしまいます。
これまでの常識の枠にとらわれることなく、さまざまな知識や学問の力を結集し、最新テクノロジーの力を借り、またAPUというDEI&Bの環境を活かしながら、すべての人が活躍できるコミュニティをつくることに貢献したいと考えています。
立命館アジア太平洋大学 教員紹介
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