李 根煕(イ クニ) | APU 研究シーズ - 立命館アジア太平洋大学

まだ教科書にはない最先端マーケティングを

カテゴリー :

経営学マーケティング
#消費者行動論#SNSマーケティング#消費者主導イノベーション(CDI)#共創

概要

企業・学生・大学研究者のコラボレーションにより、最先端の消費者マーケティングを追究する。

ソーシャルメディアの普及により、企業と消費者の関係は劇的に変化しています。消費者によるネット上の口コミ(eWOM)は、企業のマーケティング戦略や製品開発を左右するほどになり、その影響力は年々増大しています。こうした急速な変化の中では、たとえ最新の優れたマーケティング理論であっても、本になった頃にはすでに古くなってしまっているかもしれません。
本研究は、こうした課題に対し、独自のアプローチで取り組んでいます。それは、まさに今を生きる消費者でもある学生たちを、実在する企業のマーケティング課題の解決に、直接参加させる方法です。多様な学生たちの生の声と発想を、企業の課題解決の提案に活かすことで、最新の消費者視点を取り入れた提案を行うことを可能にしています。その提案力の源泉となっているのが、APUに世界100カ国以上から集う外国人留学生と、彼らと一緒に勉強する日本人学生です。
この取り組みは、結果として企業・学生・大学研究者の三者それぞれにメリットをもたらしています。企業は最新の世界的視野の消費者インサイトを得られ、学生は実践的な学びの機会を得られ、大学研究者は理論と実践の新しい統合を実現できています。ニューバランスや三和酒類など、国内外の著名企業との連携実績は、このアプローチの有効性を示しています。

図

企業、学生、教員(研究者)のコラボレーションが、最新のマーケティング課題に対するユニークな提案を生み出す。

新規性・独自性

変化し続ける消費者マーケティングへの必要不可欠なアプローチ。

デジタル技術の進化に伴い、消費者行動は日々刻々と変化しています。SNSでの情報拡散は瞬時に起こり、消費者同士のコミュニケーションが企業や製品の運命を左右することも珍しくありません。こうした環境下では、マーケティングの専門家一人の視点や、既存の理論だけでは不十分です。
本研究のアプローチの独自性は、この現実に正面から向き合い、解決策を見出したことにあります。APUに世界各国から集まる学生たちは、それぞれが最新のデジタルトレンドを体現する生きた消費者です。彼らの多様な視点と経験、アイデアを、企業の実践的な課題解決に活用する手法は、従来の産学連携の枠を超えた試みといえます。
実在する企業のマーケティングの課題を学生が議論しアイデアを出すという試みは他大学でも行われているかもしれません。しかし、本研究では、世界100カ国以上からの外国人留学生が全学生の半数以上を占める、というAPUの学生構成が大きな違いを生み出します。例えば、海外に進出しようとする日本企業の現地でのマーケティング課題、といった難題にも、速やかにソリューションを提案することができるのです。
研究手法においても、状況に応じた柔軟なアプローチを採用しています。研究代表者が担当する大規模授業では200名を超える学生が多様な意見を展開し、集約と分析を通じて包括的な解決策を導き出します。また、少人数ゼミでは特定の課題に対する深い分析と提案を行います。さらに、研究成果を動画で発信するなど、時代に即した情報共有の方法も積極的に取り入れています。

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スポーツシューズのグローバル企業「New Balance」とのコラボレーション。
学生たちによるディスカッションやプレゼンテーションの様子。

社会連携に向けて

SNSマーケティングや消費者行動分析の分野で、企業・学生とともに走り続ける。

本研究の活動は、すでに多くの具体的成果を生み出しています。例えば、New Balance(株式会社ニューバランス ジャパン)との連携では、Z世代へのブランド認知度向上という課題に対し、学生たちの視点を活かした提案を行い、高い評価を得ました。また、APUのある大分県のバス会社、大分交通(株)との共同研究では、運転手の人材確保という多くのバス会社が抱えている課題に対し、若者の価値観を踏まえた解決策を提示し、実際の採用改善につながりました。また、焼酎の「いいちこ」などで知られる大分県の三和酒類(株)では、アジアへの展開に向けた課題に対し、対象となる国々からの留学生たちが実効性の高い提案を行いました。反対に、海外企業が日本で事業展開する際の課題に取り組んだ例もあり、他にも、地元の中堅中小企業から、グローバルなエンターテインメント企業まで、幅広い企業とのコラボレーションが行われています。
これらの成果は、従来の産学連携とは一線を画すものです。企業にとっては、マーケティングの専門家の知見に加えて、ターゲット層である若者の生の声を直接得られる機会となります。学生たちにとっては、実際のビジネス課題に取り組む貴重な経験となり、そして大学教員でもある研究者にとっては、理論と実践を結びつける新しい教育・研究モデルの確立につながっています。
今後は、このアプローチをさらに発展させ、より多くの企業や組織との協働を目指しています。特にSNSマーケティングや消費者行動分析の分野では、急速に変化するデジタル環境に対応した新しいアイデアや知見を提供できると考えています。

動画『ニューバランスが李先生の授業、消費者行動論とコラボ』より

動画『What Should You Study in Japan? Marketing』より

関連研究

「バス業界における人材確保のための職務選択・継続の動機要因」

詳細情報・関連リンクはこちら

研究代表者
李 根煕
李 根煕
LEE Geunhee
立命館アジア太平洋大学
国際経営学部 教授

現代のマーケティングでは、どんなに優れた理論でも、すぐに古くなってしまうリスクがあります。特にSNSの影響力が増す中、企業と消費者の関係は常に変化し続けています。研究者である私も、自分一人の視点だけでは不十分であると自戒を込めて考えています。
APUの多様な学生たちは、まさに今を生きる消費者そのものです。彼らとともに企業の課題に取り組むことで、常に最新の消費者心理やトレンドを捉えることができます。この取り組みは、結果として三者にメリットをもたらしていますが、それは目的ではなく、現代のマーケティング研究に必要不可欠なアプローチだと考えています。
これからも、さまざまな企業との連携を深め、最新の課題に耳を傾け、学生とともに実践的な研究を続けていきたいと考えています。

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