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多角化戦略とは何か



 経営理念は、組織の存在意識や使命を普遍的な形で表現し、企業の基本的な価値を定義する。事業ドメインは、企業の戦う領域を限定し、組織活動の指針となる。この2つは、経営戦略の上位概念であり会社の舵取り役としての経営者が経営の枠組みとして設定すべき重要な要素である。


経営理念

 経営理念(企業理念とも呼ばれる)は組織の存在意識や使命を普遍的な形で表現した基本的価値観である。平たくいえば、経営理念によって経営者は「会社や組織は何のために存在するのか、経営をどういう目的で、どのような形で行うことができるのか」ということに関する基本的な考え方を企業の内外に伝え、共有化する。また、社員に対して行動や判断の方針を与えることができる。その価値観自体に社員が共鳴すれば、働くインセンティブにもなり、企業における求心力にもつながる。すなわち経営理念は企業文化を形成する主要な要素なのである。

 経営理念の内容は、行動規範的なもの、成功のための鍵や経営姿勢を示すもの、企業の存在意義を示すものなどいろいろな形で表現される。一般的には、社会、顧客、および従業員の三者に関する理念が設定されることが多い。なお、企業ビジョンという言葉も経営理念と似た意味で使われることが多いが、これは経営理念のうち未来の目指す姿に焦点を当てたものといえよう。


事業ドメイン

 企業は事業ドメインの設定により、競争に立ち向かう領域または空間を設定し、組織活動の指針とする。事業ドメインは、企業の方向性を示すうえで、非常に重要な意味を持つ。

 例えば、ある鉄道会社が、事業ドメインを「鉄道事業」と定義した場合と「総合輸送事業」と定義した場合とでは、おのずと環境変化に対応する発想が変わってくる。「鉄道事業」とした場合は、輸送技術が変化するなどして他の輸送手段が台頭しても、鉄道という枠内でのみ優位に立つことを模索する。一方、「総合輸送事業」と定義した場合は、環境変化に対して鉄道以外の輸送手段にも参入することにより、競争優位を確立することを考えることになるであろう。

 このようにドメインは、企業活動の方向づける指針となる。事業ドメインを掲げることによって、経営資源をフォーカスさせ、継続的に経営資源を一貫して蓄積でき、組織全体として、どの製品分野や市場で競争に立ち向かうか、方向性を定めることができる。また、事業ドメインの設定そのものが、従業員や顧客に夢や希望を与えるCI(コーポレート・アイデンティティー)とも密接に関連している。


ドメインとCI

 企業規模が小さく、誰の目から見ても進むべき方向性が明らかな場合、ドメインを定義する必要性は小さい。だが、企業は規模が大きくなり多角化が進むようになると、多様な事業を貫く一つのアイデンティティーの必要性を痛感するようになる。例えば、サントリーは、酒類会社から、フード、医薬、出版、通信販売、カルチャー・ビジネスの展開と、生活文化全般に貢献するより大きな企業になることを目指して、「生活文化産業」という新たな事業ドメインを設定した。

 ドメインの再定義は、ビジネスに大きな枠をはめるという効果をもつと同時に、従業員や顧客に夢を抱かせるCIとして効果も持っている。その意味で、CIは、経営理念や従業員の意識と行動を変革し、企業文化の再構築を指向するものであり、企業の存在意義とイメージを内外へアピールすることになるのである。