2017年度 科学研究費助成事業による研究 No.10

研究課題:Medusa's Gaze: The Politics and Aesthetics of Horror in the Age of Hyperviolence

研究代表者:MANTELLO Peter

研究内容

私は、様々な事象がどのように大衆文化と現代の戦場を関連付けているかについて検証しています。具体的には、非国家戦闘員がどのようにかつてなくメディア的美学を殺戮に活用しているかを調査しています。本研究は、戦争の過激な存在論が進行しており、自由主義戦争(Liberal War)と戦争美化についての従来の基準とルールがいかに脅かされていることを論ずるものです。

自由主義政権が概して犠牲的な暴力行為の重要性を認めたがらないのは、政権自体が本質的に「現代の」構成物であると考える傾向にあることが主な原因であり、そのため政治基盤は流血からでなく裁判や議会、憲法の手続きによって成り立つと想定するからです。したがって、焼身自殺などの自己犠牲や公開処刑は、欧米人は理不尽で原始的なものと見なします。その一方で、例えば特攻任務のような犠牲的様相や儀式化された処刑は、今日多くの人が政治的暴力を特徴付ける行為であると考えています。

個々の事例(過酷な戦場、専制的指導者、圧制を受ける民衆、軍服姿の兵士など)にこだわらず、単に報道された出来事や行為の信憑性・客観性より、むしろ私たちのそれらとの関わりやその関連性から生まれる新しいソーシャル・コミュニティーの点から、これらの暴力にまつわる新しいパラダイムを再考すべきです。

研究動機

先行研究で、私は対テロ戦争に関連した米国の「消費」行動、具体的には隠密の戦争行為(極秘の殺害リスト、ドローン戦争およびターゲット殺人)が、メディア界でどのようにありふれたものとして扱われていくかを調査しました。本研究においては、未開拓な分野である非国家戦闘員による政治的暴力という新たな存在に焦点を当て、メディアと戦争の「間主観的」関係についての自身の幅広い知識を生かしたいと思います。

研究の特色と意義

戦争美化における戦略的な広報手段としてのメディアの重要性の高まりについては多くのメディアと国際関係の研究者が論文を書いていますが、戦争が非国家的行為者によって主導されていく時代に、政治暴力を国家と軍人の視点からのみ見るメディアの伝統的な枠組みはすでに効力が失われている、と本研究は主張します。イリアスの戦場から視覚的には残虐ながら洗練されたイスラム国家のメディア・キャンペーンに至るまでの歴史の歩みを辿ることによって、本研究は、自由主義の思い込みと自由主義戦争の固定観念に異論を立て、新たな形で現れている暴力の哲学的、文学的および政治的な様相を明確にしようとするものです。


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