
木下/今回初めて、APUのキャンパスに寄せていただきました。留学生と日本人学生が半数ずつという教育環境は素晴らしいですね。これからますます海外での仕事が増えていく時代に、APUの理念は大変貴重だと思います。
カセム/大学も国際競争の時代を迎えています。そうした中では、どうしても大学経営が効率主義に走りがちです。でもAPUでは開学時のコンセプトを大切にしながら、「人づくり」をしっかりとやっていきたいと思っています。
木下/当社も同じ考えです。いくらIT化が進んでも、それを支える「人」をおろそかにしてはいけません。当社の考え方の大きな柱は、「知恵と改善」そして「人間性尊重」です。
いま私共は世界規模でビジネスを展開していますが、それを支える「研究開発」「技術開発」は日本でしっかりやりたい。そしてこうした開発力のもととなっているのが、当社で働く「人」、そして彼らの「能力」なんです。
先日、静岡県沼津市などで開かれていた第39回技能五輪国際大会で、日本は金メダルを16種目で獲得し、金メダル数で世界トップに立ちました。なかでも、デンソー、豊田自動織機を含むトヨタグループは金メダルを5個獲得できました。こうした技能をしっかりと伝承していかなければならないと思います。また、機械化が進み「人の技能はもう要らないのではないか」という声も聞かれますが、これは大きな間違いです。やはり「ものづくり」の基本は「人」であり、「能力」であると改めて思います。

カセム/私の価値観は副社長と共通のものです。実は私は国連の機関で研究員をしていた頃に、中部地方の「ものづくり」に関する調査をしていました。そこで出会った職人の方々の、仕事への態度、約束を守る事へのこだわりなどに、心を打たれたものです。
そうした「ものづくり」の世界の素晴らしさを、私は学生にもっと知ってほしいと思っています。そのために、自動車、家電、住宅といったメーカーの「ものづくりの現場」で調査を行うプログラムが導入された授業も行っています。そこで学生たちは、生産に携わる人々の温かさや「志」の高さを、身をもって知ることになります。
木下/「現場」主義は何より大切です。当社の会議では、発表や議論をするときに必ず「現場を見たのか?」という言葉が聞かれます。情報化が進み、世界中に生産や販売の拠点をもっている企業でも、「現場」を見ることが基本だと私共は考えます。学生のみなさんも、生産現場を知ることで成長し、人間的にも強くなっていくのではないでしょうか。