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トヨタ自動車株式会社 取締役副社長 木下光男氏

留学生も日本人学生も、 両者の良い点を見つけて伸ばし合う。 APUで学んだ人たちは、国際社会に求められる ハイブリッドな人材ですね(木下)。

トヨタ自動車株式会社 取締役副社長 木下光男氏

1968年東京大学法学部を卒業し、トヨタ自動車工業株式会社(1982年トヨタ自動車株式会社に社名変更)入社。2003年専務取締役就任。生産管理・物流本部本部長、事業開発本部本部長、調達本部本部長、住宅事業本部本部長を経て、2005年より現職。

未来を見すえた「人づくり」が、 APUの教育の使命です(カセム)。

木下/今回初めて、APUのキャンパスに寄せていただきました。留学生と日本人学生が半数ずつという教育環境は素晴らしいですね。これからますます海外での仕事が増えていく時代に、APUの理念は大変貴重だと思います。

カセム/大学も国際競争の時代を迎えています。そうした中では、どうしても大学経営が効率主義に走りがちです。でもAPUでは開学時のコンセプトを大切にしながら、「人づくり」をしっかりとやっていきたいと思っています。

木下/当社も同じ考えです。いくらIT化が進んでも、それを支える「人」をおろそかにしてはいけません。当社の考え方の大きな柱は、「知恵と改善」そして「人間性尊重」です。
いま私共は世界規模でビジネスを展開していますが、それを支える「研究開発」「技術開発」は日本でしっかりやりたい。そしてこうした開発力のもととなっているのが、当社で働く「人」、そして彼らの「能力」なんです。
先日、静岡県沼津市などで開かれていた第39回技能五輪国際大会で、日本は金メダルを16種目で獲得し、金メダル数で世界トップに立ちました。なかでも、デンソー、豊田自動織機を含むトヨタグループは金メダルを5個獲得できました。こうした技能をしっかりと伝承していかなければならないと思います。また、機械化が進み「人の技能はもう要らないのではないか」という声も聞かれますが、これは大きな間違いです。やはり「ものづくり」の基本は「人」であり、「能力」であると改めて思います。

「ものづくり」の現場を知ることで、  人は成長し、強くなります(木下)。

カセム/私の価値観は副社長と共通のものです。実は私は国連の機関で研究員をしていた頃に、中部地方の「ものづくり」に関する調査をしていました。そこで出会った職人の方々の、仕事への態度、約束を守る事へのこだわりなどに、心を打たれたものです。
そうした「ものづくり」の世界の素晴らしさを、私は学生にもっと知ってほしいと思っています。そのために、自動車、家電、住宅といったメーカーの「ものづくりの現場」で調査を行うプログラムが導入された授業も行っています。そこで学生たちは、生産に携わる人々の温かさや「志」の高さを、身をもって知ることになります。

木下/「現場」主義は何より大切です。当社の会議では、発表や議論をするときに必ず「現場を見たのか?」という言葉が聞かれます。情報化が進み、世界中に生産や販売の拠点をもっている企業でも、「現場」を見ることが基本だと私共は考えます。学生のみなさんも、生産現場を知ることで成長し、人間的にも強くなっていくのではないでしょうか。

立命館アジア太平洋大学 学長 モンテ・カセム

1947年スリランカ生まれ。スリランカ大学建築学科卒業後、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了・博士課程単位取得。国際連合地域開発センター主任研究員等を経て、1994年より立命館大学国際関係学部教授、政策科学部教授を歴任。2004年より現職。

 世界中から集まった学生がともに学ぶ APUの国際環境。 異文化に触れることで自国の文化を深く 理解できるのです(カセム)。

学生には未来を変える力を、 身につけていってほしい(カセム)。

木下/「最近の若者」、というありがちな言い方になってしまいますが、頭は良くてもこらえ性のない人が多くなったとよく言われますね。18歳からの学生時代に、何かひとつ、苦境を乗り越えるためにがむしゃらになった経験があると、それからの生き方が変わってくると思います。学業でも、スポーツでも、あるいは海外へ出かけて知らないところで悪戦苦闘してみるとか…。

カセム/そういった経験をする機会がAPUには数多くあります。また、新たな教育プロジェクトとして、学生たちを発展途上国へ派遣し、そこで現実に存在する問題を解決させることも検討しています。現地の人たちとコミュニケーションを図り、知恵を出し合い、汗を流して働く。具体的には、現地に小さな発電所を作るといったプロジェクトなどを想定しています。

木下/それは素晴らしいアイデアですね。成果を楽しみにしています。
学長のお話を聞いていて、私も当社とAPUとの価値観の共通性を感じています。私は常々、社員に「こういう人になってほしい」という話をする時に、3つのことをあげています。最初の2つはかつて著名な経済人の方から教わったことで、3つ目はオリジナルです(笑)。
それは「時間」「空間」「人間(じんかん)」を読むということです。まず「時間」というのは歴史です。歴史を知ることで、これから世界が、そして日本がどう動いていくのかが分かる。そして「空間」は、国際化した社会への理解、関心です。最後の「人間(じんかん)」は、人がどんな時にやる気を出し、いい仕事をするのかを知ることです。

カセム/偶然ですね。私も同じようなことを学生に言っています。大切なことは「時代を読む力」。そのために歴史を学びなさい。次は「地球を読む力」。環境問題への理解や、国際性を身につけなさい。そして「人を読む力」。82カ国・地域から集まった友人との絆を大切にしなさい、と。

木下/本当に同じ内容ですね。

カセム/過去を変えることはできない。未来を変えるために学ぶことの大切さ。それを学生たちに伝えていきたいと思っています。