学長ノート

卒業生へのメッセージ (2016秋卒業式)

2016/09/16

是永 駿 第3代学長

栄えあるご卒業、おめでとうございます。20世紀は情報技術革命に象徴されるように科学技術のめざましい発達が人類に恩恵をもたらした世紀でしたが、同時に悲惨な戦争をいくたびも経験した時代でもありました。しかし、その愚かな戦争の歴史を繰り返すかのように、21世紀に入って十数年たった今も、世界は、争乱や紛争が絶えない混沌の中にあります。そうした現代社会へ船出する皆さんに贈る言葉は、「建学の精神を胸に、世界と向き合おう」ということです。

私たちが暮らす世界は今、グローバル化が進むとともに、国際的な相互理解をないがしろにした行動や、過激思想に染まった非人間的なテロが横行するなど、人類の歴史の上でも、これまでとは次元の異なる新たな危機に直面しています。この危機的な状況の中で、私たちがとるべき行動は、人間ひとりひとりの存在を互いに尊いものと見るヒューマニティーに根ざしたものでなければなりません。いかなる摩擦、対立も対話を通じて理解しあうことから解決への道が開けます。暴力に訴えることからは何も生まれず、最後には理性が勝利する、それが私たちが生きる人間世界の普遍的な真理となるべきなのです。

APUは、自由、平和、ヒューマニティーを建学の精神として掲げ、国際的な相互理解やアジア太平洋の未来創造をめざす大学です。このAPUの精神を胸に、混沌とした世界の非人間的な動向に毅然とした態度で向き合っていきましょう。ヒューマニティーを尊び、普遍的な真理を探究する大学に学んだ学生として、自信と誇りをもって生きて下さい。

APUは建学から16年を経た今、日本を代表する国際大学の地位を不動のものとしています。2014年には文科省の「スーパーグローバル大学」の一校に認定され、この8月には、経営学部とMBAをセットにしたビジネス・ユニットの国際認証機関であるAACSBの認証を獲得しました。2008年にこの国際認証へのチャレンジを開始して8年間、認証を取得できたのは、関係する教職員の並々ならぬ研鑽と努力の賜物です。世界のトップクラスへの道を歩む基盤となるものを手に入れたのです。APUは主に社会科学にフォーカスした大学であり、この分野で、日本そしてアジアのトップクラスへの道を歩み始めます。このAPUの限りない未来への展望を校友の皆さんとともに切り拓いていきましょう。

数年前に西園寺公望のご曽孫にあたる西園寺裕夫様がご来学した折、公望の精神である自由主義と国際主義の精神が140年を経てこのAPUに花開きましたね、とおっしゃって下さいました。明治の元勲である西園寺公望が私塾「立命館」を京都の御所のなかに開設したのは1869年、明治2年、今から147年前です。3年後の2019年はその私塾「立命館」創始150年にあたりますが、その年こそAPUが開学して20年の記念すべき年にあたります。皆さんは世界のトップクラスへの道を歩み始めたAPUの卒業生として誇り高く、凛々しく人生を送って下さい。そして開学20周年にまた帰ってきて下さい。あらためて、ご卒業おめでとうございます。



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