ニュース

APU教員がスマートシティにおける感情認識AI倫理研究に研究助成金を獲得

研究

2020/11/10

Peter Mantelloアジア太平洋学部教授とNader Ghotbiアジア太平洋学部教授がメンバーとして参加する日本と英国の6大学、8名の研究者から成るリサーチチームは、「都市における感情認識AI ~日英発倫理的生活設計に関する異文化比較研究」と題する3年間の研究に対して、UKリサーチ・イノベーション(UKRI)の国際共同研究基金(FIC)から研究助成金を獲得しました。このプロジェクトはUKRI-JST Joint Call on Artificial Intelligence and Society の一貫として日英の研究助成機関によって共同助成されており、2020年1月から2022年12月31日まで実施されます。プロジェクトの総額は約£710,000です。(UKRI’s Economic and Social Research Council から £497,710と日本の科学技術ファンドから29,645,000円)

『…人間にしかできないと思われていたことを機械がすることができる段階に、我々は達しました。それは、人の感情を読み取ることです』
Peter Mantelloアジア太平洋学部教授

人口知能AIはデータまたはその他のインプットに基づき意思決定をデザインするコンピュータープログラム/システムで、ニュースやメディアではよく見受けられるようになりました。その多くのAIシステムが単純な物理的データを扱うのに対して、感情認識AIは単純なインプットではなく、さらに応用して人間的な感情を扱います。

感情認識AIはシステムが人々の感情、情緒、意思に、身体の動き、声、表情、体温からも得られるデータを使って、感知し学習し働きかける新しい技術です1。これらの技術は、高性能機器、ビル、都市に使われるにつれ、プライバシー、セキュリティー、安全、システムのバイアスなどの倫理的社会的な問題を浮き彫りにしつつ、人々の周りの環境への適応方法を変化させていきます。これらの課題と人々のニーズに応えるものでなければ、近年の顔認識技術に対する反発に見られるような、技術に対する不信感につながるおそれがあります。

日本チームの代表であるMantello教授は次のように記しています。
『感情は人生経験における重要な部分です。感情は私達の学習能力、意思決定に影響を与え、健康状態および幸福度全体を左右します。しかし、長い間、感情は数値化することが難しく、感情を読み取る技術は存在しなかったため、技術の発展において無視されていました。しかし、感情コンピューティング、機械学習、人工知能の進化に伴い、人間にしかできないと思われていたことを機械がすることができる段階に達しました。それは、人の感情を読み取ることです。』

研究チームは、スマートシティにおける異文化間ビジネス、セキュリティ、メディア等の環境において、倫理的かつ善良に生活するとはどういうことかを見極めることを目的としています。チームはスマートシティでの感情認識AIの開発または展開に関わる主要な関係者から聞き取り調査を行っています。そして、これらが感情認識AI技術の開発にいかに影響するかを確かめるために、公共の場において感情に関するデータの収集とその使用におけるガバナンスアプローチ(法律、規範、価値観)について今後検証していきます。

「感情認識AI(EAI)が都市に台頭するにつれ、一般市民の日常生活に大きな影響を与えるでしょう。」
— Dr. Lachlan Urquhart,
University of Edinburgh

イギリスチームのメンバーDr. Lachlan Urquhartはプロジェクトが目指すものについて次のようにコメントしました。
『感情認識AI(EAI)が都市に台頭するにつれ、一般市民の日常生活に大きな影響を与えるでしょう。内的な感情の状態を可視化する試みによって、公共の場所でのデータプライバシー、毎日の生活の感情監視、ガバナンスメカニズムによって市民の価値感と権利をいかに保護するかという問題が直ちに生じてきます。私達は、市民、法執行機関、産業界がなにを考えるのかを理解したいのです。特に、彼らが共存したいと思う倫理的EAIシステムをどのように作るかに関心があります。日英両国でこの研究を実施することにより、ガバナンスとシステムデザイン双方において成功事例となる全く新しい異文化間の学びの展望が持てます。』2
チームは感情認識AIに対する一般市民の様々な反応の理解を重視し、都市の感情認識AIと共に倫理的かつ善良に生活することを目指す創造的ビジョンを、一般市民主導で共同してデザインしようとしています。チームは、最終的には一般市民の視点を含む、都市の感情認識AIの使用に関わるすべての関係者に研究成果を還元することを目指しています。

この助成金により後世に残す財産は、政府、産業界、教育者、その他の関係者に感情認識AIと異文化要素について公正で倫理的な助言を行うシンクタンクの創設となるでしょう。

日本チームはPeter Mantello教授がリーダーを務め(立命館アジア太平洋大学 専門:情報監視・予測ポリシング)、メンバーは田中洋美准教授(明治大学 専門:デジタルメディア・ジェンダー)、 Nader Ghotbi教授(立命館アジア太平洋大学、専門:異文化倫理・衛生学)、宮下紘教授(中央大学 専門:AIとデータプライバシー)立命館アジア太平洋大学助手・博士課程学生Tung Ho Manhです。イギリスチームはリーダーのAndrew McStay教授(Bangor大学 専門:感情AIの社会的影響)、Vian Bakir教授(Bangor大学 専門:情報監視と偽情報)、Dr. Diana Miranda(Northumbria大学 専門:犯罪学・監視技術)です。

本プロジェクトに関する詳細は、Emotional AI lab をご覧ください。

注:
1. Exploring the ethics of emotional artificial intelligence (Northumbria大学プレスリリース)
2. Large Grant Win will Facilitate Research on Emotional AI in Smart Cities at the University of Edinburgh (Edinburgh大学)



  • LINEで送る

PAGETOP